理工学の教育を受けた者として非常に残念なことだが、すべての科学技術は価値中立で、善用も悪用もできる。人権状況を良くする/悪くするものは、常に人の営みだ。そこで重要なものは目的、原則、プロセスを言語化したガイドラインを作ることだ。
人権状況を良くも悪くもできる技術的産物の例として、例えばSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)がある。SNSの設計と運営によっては、ヘイトスピーチは取り締まりつつ、社会を改善する「異議申し立て」の手段として使うこともできるはずだ。その一方で、広告ビジネスのための数値指標の向上に血道を上げるなら、多くの場合、人権を侵害する方向に向かう。
安全工学、リスク学のような技術と人の営みの越境分野はすでに存在する。既存の知識、思考のフレームワークを援用しつつ、人権フレームワークを深く考えることで、人権状況を改善する「科学技術の使い方」を確立することはできるはずだ。
とりあえず、SNSをなんとかしてほしい。