福島第1原発から出た汚染水をALPSで処理し希釈したもの——いわゆるALPS処理水の安全性は、科学的に決着が付いているか否か。
科学分野では定評がある"Nature"の記事は両論併記だ。トリチウムの生体濃縮の可能性は確認されていないが「リスクがある」と考える海洋学者らもいる。
Is Fukushima wastewater release safe? What the science says
https://www.nature.com/articles/d41586-023-02057-y
記事より:
ALPS処理水では、線量はほぼバックグラウンドレベル。だが、研究者の中には、これでリスクを軽減するのに十分かどうか確信が持てない者もいる。
英国ポーツマス大学の環境科学者であるジム・スミスは、太平洋周辺の国々に与えるリスクはおそらく無視できるものだろうと言う。「ゼロと言うのはためらわれるが、ゼロに近いだろう」。
ハワイ大学マノア校の海洋生物学者であるロバート・リッチモンドは、「ALPSによる水の処理と海洋放出は、海洋の健康と人間の健康にとって安全であることを、私たちが納得できるように証明したか? 答えは "ノー "だ」「汚染の解決策としての希釈という概念は、明らかに誤りであることが示されている」と言う。
(続き
関連して。太平洋島嶼国であるFijiは、ALPS処理水放出問題に敏感だ。
Fiji Timesの7月11日付け記事。
https://www.fijitimes.com/pacific-hits-back-pif-panelist-responds-to-iaea-fukushima-is-safe-decision/
米エネルギー環境研究所(IEER)のアルジュン・マキジャニ所長は、IAEAの報告書を「IAEAは、行動の正当性を審査する責任を放棄した」Iと厳しく批判した。
IAEAは放出の正当化の判断は日本政府に委ねた。これは「IAEAが自らのガイドラインに定めた正当化の原則を台無しにする、実にひどいやり方だ」。
正当化とは放射線防護の国際基準の基本原則のひとつであり、IAEAのガイドラインは、放射線リスクをもたらす活動は、社会と個人への害を上回る利益を証明しなければならない。
(なお、IEERのマキジャニ所長は前述の専門家パネルに参加している)