東京大学大気海洋研究所の海洋学者である乙坂重嘉は「有機的に結合した形のトリチウムは魚や海洋生物に蓄積する可能性がある」と言う。「これらの放射性核種が環境に与える長期的な影響を評価することが重要だと思う」
東京電力はALPS処理水を含む海水で海洋生物を飼育する試験を実施しているという。「海洋生物の体内のトリチウム濃度は一定時間後に平衡に達し、生活環境中の濃度を超えないことを確認した」と東京電力の広報担当者は述べた。
前出リッチモンド博士らを含む専門家パネルは、東京電力との対話も踏まえ、ALPS処理水海洋放出の欠陥を指摘し放出を中止し代替手段を取るべきだと提言する。
「1.東京電力は、タンク内の具体的な放射性核種含有量に関する知識が著しく不足している
2. 東京電力の測定プロトコルは統計的に欠陥、偏りがある」などと、科学の立場から東京電力を厳しく批判する。
関連して。太平洋島嶼国であるFijiは、ALPS処理水放出問題に敏感だ。
Fiji Timesの7月11日付け記事。
https://www.fijitimes.com/pacific-hits-back-pif-panelist-responds-to-iaea-fukushima-is-safe-decision/
米エネルギー環境研究所(IEER)のアルジュン・マキジャニ所長は、IAEAの報告書を「IAEAは、行動の正当性を審査する責任を放棄した」Iと厳しく批判した。
IAEAは放出の正当化の判断は日本政府に委ねた。これは「IAEAが自らのガイドラインに定めた正当化の原則を台無しにする、実にひどいやり方だ」。
正当化とは放射線防護の国際基準の基本原則のひとつであり、IAEAのガイドラインは、放射線リスクをもたらす活動は、社会と個人への害を上回る利益を証明しなければならない。
(なお、IEERのマキジャニ所長は前述の専門家パネルに参加している)