〈Abstract〉
「本研究は、個人の態度と行動に影響を与える際に社会的ランクの諸次元が付加的に結びつくのか、それとも統計的な交互作用が現れるのかを決定しようとするものだ。もし後者であれば、垂直的移動ないし地位の非一貫性効果を支持するであろう。規模がだいたい同じインディアナ州とアリゾナ州のそれぞれ3つのコミュニティにおいて、男性の世帯主にインタビューした。2つの形の移動(キャリア移動と世代間移動)、および6つの形の非一貫性(達成形態 対 帰属形態を含む)が採用された。43の独立変数が用いられ、その大部分は移動ないし非一貫性の帰結として以前から提唱されていたものだった。関係の大部分は付加的であるように思われた。現れなかった交互作用はいかなる独立ないし従属変数に関しても塊をなして(clustered)おらず、通常は都市によって形が異なり、移動ないし非一貫性理論を基に予想されるパターンには似ていなかった。その発見は、多次元的で付加的なモデルが個人への社会階層の効果を適切に表現することを示唆する」p.701.
「我々の発見を過去の研究と結びつけて、移動および非一貫性効果は、ランク次元の主要効果が厳密にコントロールされる時には常に消滅すると我々は結論する。多次元的な付加的モデルが、今日の米国におけるランク効果を表すには適切に思われる。
これらの結果の最も明白な理論的示唆は、移動と非一貫性それ自身は個人に(ストレスフルに、あるいは他の形で)影響を与えないことだ。このことによりまた、そうした仮説が引き出された仮定のいくつかに疑問が生ずる。例えば、ランク地位が異なると明らかに異なった期待が抱かれる、あるいは、葛藤する期待に従属させられるのは個人にとってストレスフルだといった仮定だ。…
もう1つの可能性は、移動および非一貫性の効果は生ずるものの、ただある条件下やある下位集団でのみ生ずるというものだ。…例えば、移動および非一貫性の効果はたぶん、厳格で目立つ安定的な階級構造においてのみ起きる(Broom & Jones 1970を参照)。米国では移動および非一貫性の率が高いので、様式経験となる。上昇移動のようないくつかの種類のランクの不一致は、価値構造に支えられてもいる。結果としてたぶん、異常に移動するか非一貫的な人のみがストレスを経験する。そうした効果は非常に稀なので、現在の類の研究では突き止められない」p.712.
「もう1つの代替的な仮説は(Treiman 1966 を参照)、移動および/あるいは非一貫性は、おそらくほどほどの形態においては個人に影響を与えないが、しかしそうした個人が自らの困難に対処すべくいろいろな解決テクニックと調節をすばやく学習するというものだ。そうなるとある時期のどんな集団も主として、そうした問題を全く経験していない人たちや、既にそれらを調整済みの人たちから成ることになろう。それゆえ、最近になって移動したか非一貫的になった人だけが、何らかの効果を示すことになろう」p.712.