「移動と非一貫性は概念的には区別された経験であるが(そして大部分の過去の研究はそのどちらか一方を扱ってきた)、いくつかの理由により、両者を同じ全体的な分析で考えるのが適切である。両種類の経験はいずれも、似たような介在メカニズムを通じて個人に影響を与えると考えられてきた。…また移動と非一貫性は、偏見や、社会参加からの撤退のような似た種類の反応を生み出すと考えられてきた。…最後に、両経験は、2つ(ないしそれ以上)の異なるランク位置の所有(継起的にか同時的に所有される)によって必然的に定義される。それゆえ両者は、現職や初職のような初期および後のランクからか、所得や学歴のような別々のランクから構築される。この状況は、根本的な理論的および分析的な問題を作り出す」p.701.
「我々の発見を過去の研究と結びつけて、移動および非一貫性効果は、ランク次元の主要効果が厳密にコントロールされる時には常に消滅すると我々は結論する。多次元的な付加的モデルが、今日の米国におけるランク効果を表すには適切に思われる。
これらの結果の最も明白な理論的示唆は、移動と非一貫性それ自身は個人に(ストレスフルに、あるいは他の形で)影響を与えないことだ。このことによりまた、そうした仮説が引き出された仮定のいくつかに疑問が生ずる。例えば、ランク地位が異なると明らかに異なった期待が抱かれる、あるいは、葛藤する期待に従属させられるのは個人にとってストレスフルだといった仮定だ。…
もう1つの可能性は、移動および非一貫性の効果は生ずるものの、ただある条件下やある下位集団でのみ生ずるというものだ。…例えば、移動および非一貫性の効果はたぶん、厳格で目立つ安定的な階級構造においてのみ起きる(Broom & Jones 1970を参照)。米国では移動および非一貫性の率が高いので、様式経験となる。上昇移動のようないくつかの種類のランクの不一致は、価値構造に支えられてもいる。結果としてたぶん、異常に移動するか非一貫的な人のみがストレスを経験する。そうした効果は非常に稀なので、現在の類の研究では突き止められない」p.712.