逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』読了
陰惨で悲壮な死の場面は数えきれないほどあったけれど、セラフィマ生還後のターニャとの会話で、唐突に涙が溢れた。「あたし、本気で思うんだ。もし本当に、本当の本当にみんながあたしみたいな考え方だったらさ、戦争は起きなかったんだ」戦うのか、死ぬのか。問われて、どっちも嫌だ、とターニャは答えた。「治療をするための技術と治療をするという意志があたしにはあり、その前には人類がいる。敵も味方もありはしない」読む前にも、読んでる最中にも、読み終わった今も、世界は侵略と略奪と虐殺を重ねている。期日前投票を終えて、鏡の前に立ったぼくは憲法14条を掲げたTシャツを着ている。戦争が終わって、戦争の恐ろしさを知る人々が獲得した「保障」を、絶対に手放さない。奪わせない。