フォロー

読書備忘録『なにかが首のまわりに』 

*河出文庫(2019)
*チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ(著)
*くぼたのぞみ(訳)
著者はナイジェリア出身の小説家で、世界中から注目されている現代アフリカ文学のカリスマ的存在。アフリカに対するステレオタイプの認識を浮き彫りにするとともに、その固定観念を叙情的な語り口でたしなめるスタイルは多くの人を惹き付けている。表題作はそうしたアディーチェ氏の真髄が現れている逸品だ。主人公はコネティカットに移住した黒人女性。彼女は白人男性と交際を始めると周囲から冷めた視線を投げ付けられる。そのアフリカと黒人女性に対する差別意識を含む人々の視線は、異なる生活環境を経験してきた二人の溝を深めることになる。差別意識を抱きながら対等な関係を築くことはできない。しかし差別意識とは往々にして無意識下で育まれるものである。アメリカかぶれの夫との息苦しい生活を強いられる妻の苦悩を描く『結婚の世話人』、白人に抵抗するため息子に英語を学ばせるも結果的に息子を西欧文化とキリスト教に染めることになる『がんこな歴史家』。他多数の収録作はいずれも差別意識の本質を探り、刷新を試みた秀作だ。

ログインして会話に参加
Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。