シーラッハ「禁忌」読んだ 

いや感想の言語化むっっっず
訳者後書き曰く本国で上梓されたときは賛否両論だったそうですが でしょうね

短編集の方と違って?短編集の方より強く?感じたのはエッシュブルクもビーグラーも著者の一側面なのではないかということ…これも訳者後書にあったビーグラーのエピソードの一部が著者の体験談から来ているって話、それよりもっと根本的な部分で…それもあって日本語版に寄せたシーラッハのメッセージ冒頭で良寛の辞世を引用してたのがやけに腑に落ちたりなど。
エッシュブルクの感情がどこにあるのか、徹底的に描写されないそれが本当にあったのか、彼の生きている精神世界がいわゆる一般人のそれとは隔絶しているので読者には最後まで窺い知れないのだけど、エッシュブルクの視点に立ってみると逆に全人類の精神・感情の所在が理解できないのかもしれず。
そんな世界でも出会って30分でセックスしてその後結婚して子作りまでしちゃうんだから西洋の価値観がよくわからなくなるのだった。相互理解がなくても勃つものが勃てば合体は可能!って動物的すぎんか。エッシュブルクのやったことより結婚して子供をもうけることが遺伝子レベルで刷り込まれているとしか思えない世界観の方がよっぽど理解不能だよ

冲方丁「骨灰」読んだ 

せーの 一人称視点の精神干渉系ホラー最高ー!!

大して本を読む人間ではないので、祟りに侵された人間の様子がおかしくなっていく様を一人称視点で描いたホラーが一般的なのかどうかわからないまま新鮮に読んだ
自分自身の変質に気づかないまま「自分」だと思っていたものが失われていくのって本当に怖くて、人間なんて多かれ少なかれ昔の自分とは違う意見や思想を持ってたりするわけじゃないですか。あの頃の自分が今の自分のこういうところ見たら嫌がるだろうな、とか。
そういう些細だけど不可逆な変化の、見た目の振れ幅を極端にしたものがこういう変質の恐怖なんだけど、つまり振れ幅が極端になっただけで日々自分自身の身に起こってる変化なんですよねこれ~…っていうのが上手く言えないけど私のホラーのツボらしい。壁のシミがおぞましい死者の姿を形作るよりずっと怖いし呪いが一旦収束してもリアルにずっとついてまわる。そういう恐怖をみんな味わったらいいと思うのでおすすめです

中山市朗「なまなりさん」読んだ 

この話のあと50年経ったら小野不由美「残穢」で語られるようなアレになるやつだ!!いいですね
直接のトリガーは姉妹のやらかしだけどあそこまでに成ったのは過去からずっと積み重なってきたものが集合しただけっていうのがこう…家の過去について詳細に調査・語ってくれるパートがあったら良かったなあという気持ちとあの設定でそれがあったら実話怪談っぽくないなという気持ちで匙加減が難しいやつ
因果応報タイプの話といえばそうだけど親や先祖がやらかしてきたことなんて知らねえよ!派なのであの家の祖父母以前世代は勝ち逃げした…ってコト!?すざけんあ!!!になってしまってよくない 呪いくんもさあ 家とか血とかに囚われるのよくないよ 恨みは直接の敵だけにぶつけなよ

梨さんの【6】 読んだ 

6ってそういう~~~~~
梨さん作品にしては珍しくそれなりの答え合わせがされていて…されていたか…?かわいそ笑とかオモコロでやってるホラーとかに比べたら全然…されていたと思うが…
生理的に気持ち悪い描写いっぱいだったけど文章におけるそれには耐性ある方なのでむしろ畜生様のくだりが一番怖かった 本当に一番怖かった 何が怖いってああいうマニュアル実在してそうなのと例の『瞑想』の手順途中までは普通に入眠時の習慣としてやってるやつなので…異物を混入させるな!「丸の中に10という文字」じゃないんよ
あとまあ…ニンゲンって怖いよな…曰く付きの家の子がどんな目にあったのかあんな簡潔にあそこまで陰惨な描写ってできるんだ 幽霊の死体の方がマシ ワイトもそう思います
今作はいつもの梨さんみたいに読んだ人を巻き込んで呪い手にしてくるタイプの怪じゃなかったけど読んだ人の目からハイライト消してやるぜっていう意思を感じた 逃げ道を封じてくるという意味ではいつもの梨さん
文字でのグロ描写が大丈夫なホラー好きにはおすすめかも!
 

オリガ・モリソヴナの反語法/米原万里
アグルーカの行方/角幡唯介
利休にたずねよ/山本兼一
あのときの王子くん/テグジュペリ
さいごの戦い/C.S.ルイス
犯罪/シーラッハ
膚の下/神林長平
クドリャフカの順番/米澤穂信
月夜の島渡り/恒川光太郎
猫を抱いて象と泳ぐ/小川洋子

終わってる(完結しているという意味ではない)物語が好き 10冊選んだらまさにって感じになったわ

終わってる物語(完結しているという意味ではなく、どんなにやるせなくてもこの結末しかなかったし他に残されたものは何もないいう意味)がとても好きなので当然にして好きなのだった 他人から見れば選択肢はいくらでもあったかもしれないが、彼らにはそれしかなかったので 

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読んだ本の記録 シーラッハ【犯罪】【罪悪】【カールの降誕祭】【刑罰】 

【刑罰】文庫本の発売に今の今まで気づいていなかったので購入、折角なので既読も含めて一気読み。終始淡々とした、複雑さのない簡潔な文章が書き記す様々な罪と裁判の物語は、弁護士=加害者側の視点から語られる。登場する加害者たちは理解できない怪物などではなく「そうすることしかできなかった」もしくは「不運にも足元の氷が割れてしまった」同じ人間なのだと語っている。代わりに、被害者の人生と苦痛はほぼ透明化されている。本の主題でないから削ぎ落とされている部分ではあるけれど、犯罪被害者の感情を考えれば、それを理由にこのシリーズを評価できない人がいるのは仕方がないとも思う。
作中で著者の感情があらわにされることはほとんどなく、時折物語の最後に一言、事務書類のメモのように付記される。それが共通して「寂しさ」なのが、私がこのシリーズを好きな理由かもしれない。どの話にも、根底には世界から切り離されたような疎外感と悲しみがある。【刑罰】を最後まで読んだとき、【犯罪】の序文をもう一度読み返した。

全部名作だけど「チェロ」「エチオピアの男」「家族」「ザイボルト」「友人」は特に好き。そしてシリーズの全てが凝縮された【犯罪】の序文が一番好き。

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