そこは「まちがい」の場所で、ほんとはみんな出ていかなきゃいけない部屋だった。そこから出ると正しい、元の場所に戻れるのだけど、誰もが時代も国もバラバラのところに辿り着く。私達は仲良くやっていたのだけど、部屋から出たらそのことも全部忘れてしまう、ということを理解していた。それでもなんだか不意に皆いなくなっていった。最後に私と私のすきなひとだけが残って、でも普通に生活しようとしてた。リビングみたいな部屋にいて、そこから出たら戻れないって分かってた。だのに大きな間抜け顔のスタチューが勝手に動いてドアを開け、野球のバットをつっかえにして閉まらなくした。行かなきゃいけないのだと私は踏み出し、ドアが勝手に閉まり、私はすきなひとと離れ離れにされた。振り返ってドアを叩いた。はめ込みのガラスから戸惑った顔が見えた。私は満面の笑みを浮かべて、ドアを叩きながら、ありがとうあいしてると叫び続けた。すきなひとは少し笑って見えないところに行った。代わりに私に似た人がドアの前に立ってニコニコ笑ってた。私達はもう二度と会えなくて、それを悲しむことすらないんだと知ってた。だけど私は、また会おうねまた会おうねって、そればっかり叫んでた。