「ビースト」
結構面白かった!!
白人がお株を奪うこともなく、きちんと黒人の主人公がかっこよく必死に戦うサバイバルもの
白人目線で作られた映画のように、必要以上に現地人を野蛮だったり怖そうに描くこともなく、自然に生活の場や衣装を描いており、違和感がない
ライオンが襲ってくるアニマルパニックはいくつか見たけど、これは今までで一番面白かったかな
適度な社会問題を折り込みつつ、テンポよくさくさくと進む
主人公を医者に設定したことで、ある程度の負傷をリカバリーできる強みが生まれているが、でもまあーーーーーさすがにちょっと、主人公と他のキャラの負傷度があまりにも違うので、やっぱちょっと無理があるかなと思いましたw
あと、ラストの「決戦」はさすがに無理でしょ……猫科舐めすぎw
うちの四キロもない小さな家猫ですら、近所の犬の吠え声でパニックになってわたしを噛んだひと噛みでわたしふくらはぎの筋肉が全部べっとり青あざになってしばらく動かせないぐらい麻痺したもんw
猫科の破壊力は桁外れ……
でもまあそういう部分を「だってエンタメ映画だもん!」って勢いと楽しさで包みこんだ感じのちょうどいいハラハラサバイバル映画だったな
「映画見た~!」って感じの一本
これが、人間を積極的に襲わないチーターや他の猛獣だったらこのシナリオが楽しめたとは思えない
このシナリオは、「人間の家畜を積極的に襲い、多種や同種に対し過剰殺傷を常に行うライオン」だったから意味があるのであり、それは「人間が生きるために対峙するのが自然でありうる」からできるバランスなのであって、そこにフィクションゆえの盛りがかなり載ったとしても、基本がむちゃ出ないからまだゆとりがある
コカインベアにも同じことが言えたと思う
ぶっちゃけ、サブカル文脈のモンスターおもしろ殺戮ものでない場合のアニマルパニックは、やはりこういう基本の部分がしっかり「無理のない作り」出ないと面白くない
その点、サメはジョーズがあまりにうますぎたがゆえに(当時のスピルバーグが天才すぎた)、”サメは意味もなく人間を襲いまくる”というのがまるで当たり前のように刷り込まれてしまい、”基本の無理のない作り”がそこからできてしまっているのが現在の状況を作ったんじゃなかろうか
その上、サメは水面に大半体を隠して移動できるので、特殊効果の節約ができるのが大きい
この条件なかなか他にないんだよな……
ほかと言うとトレマーズぐらいじゃないかw
で、この私感をふまえつつ、今まで見てきたアニマルパニックをどういうふうに私が評してるのかざっと見てみたら、やっぱりどれも「動物の生態に沿ってないので楽しめなかった」的な趣旨が書いてあって、やっぱり私はそういうところが気になるんだなと思った
ちなみに動物の生態で大失敗だったアニマルパニックホラー映画をひとつあげると
「ファイナル・デッド」
凶暴化した野犬が孤島で逃げ場のない人間たちを次々殺す!!!
って話なんだけど……
まあ実際の犬をある程度使って、CGは補う程度なので、結構リアルに動物の存在感は出てるんだけど、残念ながら……
「大喜びして、興奮しつつ大好きな人間に行為を表しつつ遊んでもらおうと集まっている」
様子が完璧に犬たちの表情に出ていて……
犬の表情がわからない人には怖いのかも知れないが、分かる人にとっては本当に微笑ましくて楽しそうな良い映像なので、まったく怖くもなくホラーでもないという不思議な映画になっている それはそれでかなり面白いと思う
「ビースト」のうまかった点を後からじわじわと思いついてきたのでメモ
基本的に、敬意のしっかりある作りだったと思う
まず、ちゃんとライオンの生態に沿った”襲撃”だったこと
ライオンは、他のネコ科の猛獣を過剰殺傷する いちいち巣を探し出して子どもを皆殺しにし、他の猛獣と出会えば食うためでなく殺す
オスライオンは、新しい群れに迎え入れられると、その群れの自分の血筋でない子どもを殺す だからオスライオンが近づくと群れのオスライオンはそいつを迎え撃ち殺そうとする
すべてその生態に沿ってシナリオが作られていて、無理がなかった
ライオンの能力や存在を過剰に作り上げることもなく、チャチな偽物でもない、リアルに怖い猛獣を作り上げていたこともよかった
そして、密猟というリスクの高い職業に従事せざるを得ない人々、という存在をきちんと状況で暗喩していたこと
学校は廃屋となり、村と村は遠く離れており、人口は少ない 産業もなく、インターネットもない
密猟者たちを野蛮で残酷な人間として描きすぎなかったこと
近所の人間と変わらないように描きながら、それでもそういう人がひょっと残酷を行えるのだという表現だった
そして、ライオンは害獣であること
牧畜や人間を積極的に襲う、現地の人にとっては駆逐されるべき猛獣ナンバーワンであること