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シン・「新訳 動物園が消える日」のための創作ノート 

きょう、唐突に「コロナ禍以降3年にわたり執筆中断してきた小説を、全編改稿し書き直そう」という気持ちが生まれた。
2018年頃から構想してきた近未来動物園小説「新訳 動物園が消える日」(紅テントで上演された唐十郎の戯曲「動物園が消える日」を2017年に観たことに影響を受けている)は、2019年に消滅した動物園を巡る大規模な取材旅行を経てある程度のところまで書き上げたが、私自身の人生経験・社会経験の未熟さにより描写を深められなかったこと、2020年からのコロナ禍により全国規模での休園という形で現実に「動物園が消える」事態に直面し当初抗争があまりにも陳腐なものになってしまったことから、長く凍結状態にあった。
いま、私が見た「コロナ禍の動物園水族館」の3年間をやっと総括できるようになったこと、また動物園水族館を巡る歴史的な探求活動の進展や仕事・交友を通じた自身の成長を経て、ふたたび構想を再開できる気がしてきた。
執筆に踏みきる理由はもうひとつある。躁鬱にも近い循環気質がもたらす熱狂と好奇心のため旅行と体験にのめり込んだあまり、私は交通費やら宿泊費やらに浪費してしまう悪癖がついてしまっていた。「いま、ここ」で「ここではないどこか」を夢見る修練が必要である。

シン・「新訳 動物園が消える日」のための創作ノート 

シン・「新訳 動物園が消える日」のための創作ノート 

新しい創作は、過去、現在、未来をリンクさせる。

1950年〜1955年を舞台に、ホンモノの動物たちを見たい、と願った「戦後日本の子どもたち」に応えながらも歴史の闇に消えた巨大移動動物園「タルヤサーカス/株式会社日本動物園」をモデルにして、若い移動動物園事業者「平友和」の奔走を描くパート。朝鮮戦争の拡大を憂いて現実に構想されていた「有事の際の伊豆大島への上野動物園移転計画」に平が翻弄され変わっていく様を「失敗の戦後史」のメタファーとして描出する。

2020年、コロナ禍で臨時休園している動物園の若い飼育員「中道七海」が人と動物を守るために苦闘しつつ、雇い止めでホームレスになった人と動物の未来を考えるパート。

2055年、進行する人口減少(「日本社会消滅」)のただ中、平が関わった移動動物園の歴史を発掘し、最後の花火として超大型移動動物園「Zoo Zoo トラムで」の復活(同時にそれは「日本人全員移民化計画」の国民運動を巻き起こすための謀略でもある)を構想する官僚たちの野心を描くパート。

この3軸で虚実織り交ぜて連作とする。

シン・「新訳 動物園が消える日」のための創作ノート 

ほとんどの日本人が太平洋戦争中の悲惨な出来事として「戦時猛獣処分」(『かわいそうなぞう』)を知っている。
しかし、毒餌を食べさせられあるいは飢えて死んでいく動物たちに何も出来ない無力感を抱いた若い上野動物園職員たちが、1950年の朝鮮戦争勃発時、日本が再び戦争に巻き込まれることを危惧し、二度と同じように猛獣処分を繰り返さないため、「疎開先」に伊豆大島を定め、「非常事態打開計画資料」を策定したことは知られていない。
僕も昨年訪れた伊豆大島で企画展「あんこさんとゾウ」を観て初めて知った(この企画展は井の頭自然文化園と上野動物園にも巡回し半年近く見ることができた)。「新訳 動物園が消える日」の再始動にあたり過去を舞台にしたエピソードを加えることにしたのは、この展示で知った事実から受けたインスピレーションが大きい。

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