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『魔法 (ハヤカワ文庫 FT フ 11-2)』クリストファー プリースト ネタバレ有り。 

『魔法 (ハヤカワ文庫 FT フ 11-2)』クリストファー プリースト
最高だった。何かあるとは思ってた。けど、その予想を上回ってきた。ゾクゾクした。

物語全体が1つの恋のように、盛り上がっては離れ、感情的になっては理性的になり、という緩急がある。南フランスを旅する三角関係の大人の恋だけでも楽しめた。

セクシーで、神秘的で、嫉妬深い。そんな”魅力的”な文章で、読んでて惹き込まれた。この作者の本をもっと読みたい、欲しいものリストに入れておこう、そう思った。安易に人に勧められないけど、自分の中では最高に面白かった本がまた増えた。

bookmeter.com/reviews/12016982

魔法続き 重大なネタバレ有り。未読者は読んじゃダメです。 

以下重大なネタバレあり。

好きなポイントは3箇所。物語中盤、グレイの退院後スーと愛を交わした直後に二人の認識に大きなズレがあることがわかったところ(これで信頼できない語り手が強固になった)。物語終盤、グレイが論理的な証拠を探して、スーの実家を訪れたときに生じた矛盾と、スーによる説明がなされたところ(これによって物語構造に説明がつけられ、次の仕掛けへの落差が大きくなった)。物語ラスト、ナイオール(と便宜上呼ぶ)の存在が明らかになったところ(一番の大仕掛け)。

大仕掛けは言ってしまえば叙述トリックなわけだが、作者が読者を騙すのではなく、作中の”不可視”な存在が介在することで、ただの叙述トリックとは一線を画している。語り手の人格の1つともいえるナイオールがスーにした仕打ちを執拗に描写することで、読者は十二分にナイオールに対して感情移入してしまっているのだ。登場人物に対して何でもできる神のような存在=作者ではなく、見てもらいたくても見てもらえない、実社会との繋がりを切実に求めている不可視人だからこそ、叙述トリックに感情移入できるのだ。

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