赤井秀一には狙撃する前に必ずやる験担ぎがある。それはライフルにキスをすることだ。
バーボンはライの狙撃をサポートするスポッターとなったとき、初めてそれを目にした。
神様など信じそうにない男がライフルにキスをして神に祈る行為は、これから起こる悲惨な出来事を感じさせないくらい神聖で、それにくわえて男の色気も感じさせていた。バーボンは複雑な心境になりつつも目を逸らすことはできなかった。

それから何度かライと組むようになり、お互いの機微がわかるようになった頃からだっただろうか。任務前になるとライはバーボンにキスをするようになった。おでこに。まぶたに。手の甲に。そして、くちびるに…。
それはまさしくバーボンが最初に見惚れた、ライフルにキスをする験担ぎだった。
最初こそ「僕はライフルじゃありませんよ!」と反抗していたが、回数を重ねるごとにそれは、バーボンにとっても験担ぎとなっていた。
だけどもその行為は、スコッチの事件以降二度と触れられることは無くなってしまった。

それから数年後ーーー。
公安、FBI、CIA、そして小さくなった名探偵たちは、冷静にかつ迅速に、黒の組織を壊滅へと向かう手筈を整えていた。
明日、バーボンはついに行動を開始する。これがうまくいくかなければこれまで積み上げてきたものがすべて無駄になってしまう。そう思うとどうにも落ち着かない。絶対に失敗できない、いや、この僕が失敗するはずない。
降谷は震える手指を握りしめることでおさえると、何かを決心した顔である男の元へと向かった。

“コンコンコン”
決戦前夜、赤井の家のドアが聞き慣れたノックの音を鳴らした。
インターホンではないので怪しいと思うのが普通だが、赤井は誰か分かっていた。
「やあ、降谷くん。こんな時間に何の様かな?」
そう声をかけてドアを開けると、口を真一文字に結んだ降谷が立っていた。
赤井は何も言わない降谷をそのまま家に招き入れる。君、こんなところに居ていいのか?
そうからかいたいのを堪えてしまうのは、降谷が何を言いたいかを、今は聞き逃してはならないと思ったから。
「ライ」
赤井にそう呼びかけたのは、昔まだ赤井が組織にいた頃のバーボンだった。
「ライ、おねがい。キスして…あのときみたいに。ぼくに、キスして。」
ライに、キスしてもらったら…ぼくはきっと大丈夫だから…
「もちろんだよ、バーボン…」
そういって、赤井は震えるまぶたに、かわいいおでこに、そしてくちびるにキスを落とした。絶対に大丈夫だよと願いを込めて。

お終い!

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バットにキスをする大谷翔平選手を見て赤井もするんだろうな〜って妄想しました。ハイ :blobcatblush:
普段ツリーとかやらないから読みづらかったら申し訳ないです…わたしの気持ちだけは受け取って欲しい❤️‍🔥

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