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坂本龍一『12』

songwhip.com/ryuichi-sakamoto/

幸宏さんの訃報により世界が深い悲しみに暮れる中、教授の誕生日当日にリリースされた21作目のアルバム。

Aphex Twinの『Selected Ambient Works Ⅱ』を思い出すような、ピュアなアンビエント作品。日記のように、スケッチのように、シンセサイザーやピアノを用いて記録した作品を、何も手を加えず生のまま提示したという。作り込まれたコンセプトも後加工もない、シンプルな音がただ心地よい。悲しみと喜びの両方が一曲の中で交錯し、どちらかに一方的に支配されることもない。

ここ数年は、教授のオリジナルやコラボアルバムの先進性や刺激に少々疲れてしまい、もっぱらサウンドトラック(一番よく聴いたのは『レヴェナント: 蘇えりし者』)をアンビエントのプレイリストのように、仕事中にリピートしながら聴くことが多かった(全編ピアノの『BTTB』ですらBGMとしてはあまりに雄弁)。このアルバムは、自分のような人間の日常にも優しく寄り添ってくれそうな気がする。

教授自身の「癒し」のために作られた音楽が、ぼくや多くの今を生きる人々のための癒しにもなりうる、そんな道具/ものとしての音楽。

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