映画『サンクスギビング』(2023) ※弱ネタバレ 

ストーリーには言及してないけど個々の描写への具体的言及あり。
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ゴア描写には容赦がなく、アイデアと愛嬌に富んでもいた。それらを大スクリーンでポップコーンなど口に運びながら見るのが自分の視聴目的の大半を占めていたので、満足したといえる。フェイク予告編にも出てきてた丸焼き料理がとてもよかった。

そのうえでこの映画、そもそもが80年代ごろのスラッシャーを模した作り(正確にはそのリブート版という設定らしいけど)なので、どのような感想を抱くべきか困ってしまう部分もある。

その時代のその手のホラーを一時期浴びるように見ていた人間の認識としては、それら作品の9割方には製作者側の予算・力量・志のいずれか(複数回答可)が致命的に欠けていた。端的にいえばつまらなかった。現在カルトとされている作品にも、見せ場以外は退屈で見れたものじゃない映画が山ほどある。
つまり本作は「面白くないのがデフォルトの世界」にオマージュを捧げているともいえる。
(自分は後の時代にVHS、DVD/BD、配信等で見たので、リアルタイム世代の認識とはかけ離れているかもしれない。でも本作が現在の観衆に向けて作られたものである以上、そのオマージュ元を含めて後追い世代の視点で語ることにさほどの問題があるとは思わない。)

自分の感触としては、本作にも全体的になんとなく弛緩した雰囲気はあった。現代的で才気あふれるホラー・スリラーを見たときに感じる、全身が支配されるような緊張感や気分の高揚は本作にはなかった。
そのこと自体が問題なのではない(むしろ現代の「本当に怖いホラー」が苦手な身としては助かった)。問題は、それが意図されたものなのか、それとも作り手の力量等の不足によるものなのかが判断しにくいということだ。

これが従来の作品であれば、単に「ゴア描写はよかったけど全体的にはちょっとゆるかった」という感想で済む話だ。でも本作のように、映画そのものが「ゆるさと密接な関係にあるジャンル」にオマージュを捧げていると思われるとき、そのゆるさは真摯さ・卓越さの産物なのかもしれず、ゆるさをなじる方が「分かってない」のかもしれない。

一方で、オリジナルの作品群にオマージュを捧げながらも「今」の映画として成立させる余地はあったのかもしれないし、だとしたらこの映画はそれをできてはいなかったと思う。でもそもそも作り手はそれをしたかったわけではないのかもしれないし、こちらにしても重厚さや鋭さのある充実した作品を見せられたら「なんか違う」と感じたかもしれない。
……というように堂々巡りに陥ってしまうややこしさ、面倒くささが、この手の映画を評価するときにはついて回ると思う。そして(たとえ意図していないにせよ)そのような批評のしにくさに映画が守られているように感じなくもない。

なので作品全体がある作品群(とりわけB級のもの)へのオマージュになっている映画は、どちらかというと好きではない。面白くても面白くなくても、なんとなく釈然としない気持ちになる。本作もそのような印象を打ち破るものではなかった。

しかし書いていて野暮だとも思う。「くだらないけど人がいっぱいイカれた死に方してて楽しかった」と書いて終わればよかったかもしれないし、それはそれで正直な感想でもある。
#映画 #ホラー映画

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ル豆(雲)  

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