かれこれ十何年前の話だけれども。もう何者にもなれない自分にやっと諦めもついたある頃です。そのとき住んでた家の近くに小中学生のきょうだいが住んでて、そのうちひとりがうちの犬と仲良しで散歩中よくついて来てくれてたのね。そんである日その子に「うろこちゃんは何の仕事をしてるの?」って聞かれたん。私は別段どうということもなく「こういう会社でこういう仕事をしてるよ」って答えたら、「それが将来の夢だった?」って聞かれたんよ。もうさ、そのときのおれの気持ちをどうか察してくれ。自分が失って二度と戻らぬまぶしさを放つその子の姿がよ、今なお目に痛いんだわ…