朝起きるといつも抱きしめられている。あたたかな腕がしっかりと私の体に巻き付いて、まるで離さないとでも言われているようで。
「さてはあんた、私のことカイロ代わりにしてるわね⁉」
恥ずかしさのあまり、そんな可愛くない言葉が口から飛び出てしまったのは不可抗力である。そんな私に残念だと言うロックマンは嫌味な笑顔で飽きれたような視線を送って来た。どうせいつものことだと思っているのだろう。
残念なんて言われ慣れてるし、なんならもっと酷い嫌味を言われたこともあるのに、どうして少し胸が痛むのだろう。恋人になる前はもっとなんでも素直に言葉にできたはずなのに、恋人になってからの方が素直に言えなくなるだなんてどうかしている。こんな自分は嫌だし、ロックマンだってこんな恋人は嫌だろう。そう思うのに…
「別に。ただ、僕の恋人は今日も可愛いなと思ってね」
なんでと心の中で彼に問う。どこが可愛いのよ。素直に、あんたに抱きしめられるとほっとするのだと、その一言でさえ言えないのに。
好きよと素直に言えたあの日に戻りたい。でもこの愛しいぬくもりを私は知ってしまったから…
「…少しだけ、カイロ代わりになってあげてもいいけど…」
今はこれが精一杯だと思いながら、ロックマンの体に手を回し、ぎゅっと抱き返した。
#1T67SS