SCENE3 ②
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先月より行方不明となっていた、
日廻夏八さん(20)、阿墨修二さん(20)、野々宮真琴さん(17)、西園寺サラさん(19)、一ノ瀬碧斗さん(12)、春夏冬レンちゃん(6)、シャーロット・ワトソンちゃん(6)、亘貴さん(18)、鴉羽雨之介さん(34)、花遊天親さん(28)
以上10名が〇〇県の山中で遺体となって発見されたことが明らかとなりました。
遺体として発見される前、ご本人からご家族や警察に連絡をしていたこともあり事故と事件両方の可能性があるとみて詳しいいきさつを調べています。
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SCENE4 ③
数日後。
「皆さん電子機器は破壊しましょう?怪電波と毒電波というものをご存じですか?
通常であればアルミホイルを頭に巻くことで毒電波由来の思考盗聴などから身を守ることができると言われています。
しかしこの電波には効果が無いことがわかりました。
そして怪電波とは、出どころのわからない怪しい電波のことを指します。
それなら、私たちにでたらめな情報を植え付ける毒電波を受信しないようにするしかありません、正しい情報と毒電波に侵された情報を見抜くことができますか?できませんよね。もしかしたら私たちが見ている者は全部このような電波により作られた偽物の情報かもしれないんです。
怪電波と言うべきか毒電波というべきか…とにかく、それを私たちのスマホが受信してこんなことになっているんです」
そう主張する日廻夏八の手には破壊された彼女のスマートフォンが握られていた。
春夏冬レンはただ横で、俯いて立っていることしかできなかった。
SCENE4 END
SCENE4 ②
ここから出ることができたとしても、帰る場所などなかったのだと。
ここから逃げ出したい一心で女子たちで集まる部屋を飛び出した。
そしてロビーへと着くと、春夏冬レンもまた日廻と同じ表情で立ち尽くしていた。
「ヒマワリお姉さん…僕、僕のお母さんとお父さんが、事故でいなくなっちゃったって、ニュース、で…」
レンがインターネットを見ていた時、レンの両親が事故により命を落としたというニュースが出ていたという。
気づけば手からスマホが落ち、無我夢中で走り出しここにいたということだった。
そのレンの表情からどれだけ不安だったのかが今の日廻にはよくわかる。
帰る場所が無くなってしまったのだ。
この現実を受け入れることは、日廻にはできなかった。
「レンくん。こんなのは、嘘です」
SCENE4 ①
獣誘渡駅に集まった十名の訃報のニュース記事が出ていた。
友人に弁明したいと考えても、あのニュースが出て以降、誰とも連絡がつかない。
事実上外部との連絡を断たれたという現実は、強い不安を駆り立てていた。
しかし、この出来事を機に日廻は両親と向き合う
「大丈夫、阿墨さんもいるし…しっかりしなきゃ」
独り言を呟いて自分に言い聞かせる彼女のもとに一件のメッセージが届く。
母からであった。
両親に勘当された後、家からの連絡もなかったため連絡が来るなど考えてもいなかった。
あのニュースを知らないのであろうか。
それとも、生存確認をするために送られたメッセージなのであろうか。
その送信者を見た途端日廻は嬉し涙を浮かべながらメッセージを開いた。
しかしそれは母から、娘である日廻夏八への恨み言であった。
一人で家のしがらみから抜け出し自由になったことを始めとした、夏八の死を願われる程の恨みが綴られていた。
また、夏八がいなくなったことにより姉への負担は大きくなり、先日自害したという。
それは日廻夏八に絶望を与えた。
まだ若い彼女はやりたいことがたくさんあった。
死にたくないと考えていた。
だが、そうすることで傷つく人がいて、それがよりにもよって姉だという事実は彼女に絶望を与えた。
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