コピー人間妄想3
「すまない、その「記憶」はオレは持ってない。誰か別のグ・ラハ・ティアと約束したんじゃないか?」「リンクパールで通話して、それで予定を取り付けたんだ。知らないってんなら、お前は、なんで」喉が詰まって口籠った言葉が、勢い余って噛み付くように溢れ出した。「なんでお前がこの通話に出るんだ」「お前は…誰なんだ?」
通話の相手はしばし沈黙したあと、落ち着き払った口調で答えた。「オレはグ・ラハ・ティア。バルデシオン委員会に所属する賢人。かつては水晶公を名乗り、第一世界の都市を預かる者だった」
「他のグ・ラハ・ティアたちと同じで、オレもその『記憶』を持ってる。だから少なくともオレもグ・ラハ・ティアだと言えるだろう。…もういいか?」わずかに疲れた響きが声に混じった。何も返せる答えはなかった。ああ、急に悪かった、と曖昧な返答を残し、通話を切った。