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作り過ぎる人と食べる人 

「またやっちゃった」
ほかほかと熱い湯気を立てている鍋を見ながら後悔する。後から悔やむから後悔。充分に知ってはいるが、何度目の後悔なのかはもう数えることをやめた。
大きい鍋の縁ギリギリまで入った中身を見つめ、それから悩むこと数秒。エプロンのポケットに入れていたスマホを取り出してメッセージアプリを立ち上げて、とある人物宛にトトト……と文字を入力する。
『カレー作りすぎた。食べるの手伝って』
返事が来たのは数分後。
『またやったの?手伝うけどさ』
呆れたようなスタンプがセットで送られてきたのには応戦するスタンプを送り返しておく。短い応酬の後、30分後と返信が来たので了解の返事をして画面を閉じた。

「来たよ」
「くるしゅうない」
「呼んだの君でしょ」
いらっしゃいとか言うような相手じゃないしと内心で思いながら、呼び出した金髪の男を部屋の中に通す。
「手伝うことは?」
「サラダのお皿持ってって。私カレーよそっとくから」
「了解」
適当に冷蔵庫の中の野菜で作ったサラダのお皿を持っていく男。何度目の呼び出しかも分からないので歩みに迷いは無い。
準備も終わってテーブルに座り、お互い手を合わせていただきますの挨拶をして食べ始める。
好敵手と食卓を囲む。そんなおかしな光景が、度々起こる日常の話。

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