アパシー、孤絶、非-責任、そして自由。
そういった類いの、前世紀末のレガシー、それらを真正面から"解放"として受け止めていたはずのハイティーンたちの、裏切らない、忘れない、この人を
だけでは
(通過できない者たちの、血、顔、薫りがある)
を、墓石に血文字で刻印し
出発してよい、というのは出発してよいのだから
#血液の帝国 A31
清イカラ哀シイ輝キノ顔ヲシテイルンダネ
ほとんどその含意は知らないがそういった由来を持つ橋のたもとでオジサンが果物屋を営んでいると聞いている
オジサンが水色のバケツを垂らしてどぶ川の水を汲んでいる、傷ついても陽を浴びた要約がここで薫っている
#血液の帝国 O02
ー自分自身にしか復讐されずに終わる
投げ出された一行の詩句の背後で希望的絶望の「最中」に血は流れていたと(暖かいね)そうして「最中」から「以後」へゆっくりと移りゆき咎も罪もなくなってただひんやりとわたしは(冷たいね)
ーあなたの血(灯火)はまだ湿っていますね
#血液の帝国 O22
《ただしい夏》の行方を
追ってここまでやって来たんですよ
だからこの夏が終わるらしい
とかどうとかと
関係を持たずに生きて来たんですよ
事務所近くの東屋で
副流煙を期待するには
若過ぎるのかもしれませんね
ここらの学生さんも夏至を恨むことがあったのかと知った
#血液の帝国 O21
Tue. Am.
仕事先の団地に向かう
四分の三程の
空家には等しく
陽が差し込んでいる
団地の周囲を
挨拶以外無言で歩きあった後
敷地内の小さな公園で
変わらない調子を
確認しあって笑う
ーここずーっと東に行ったら帰れるんじゃろ?
この団地は旧2号沿いで
知らない血が湿っている
#血液の帝国 O01
傷、
ひとつの傷である眼、
他の傷、他の眼、他のフォトグラフ
すべて間違った結合だが
帰結として、
喫茶店でモーニングを食べて直帰した
まだ早い
二号線に戻ってきて
光の束で血の濁流を作ろうと思う
#血液の帝国 A11
接続できない、
あなたの他人たち
が路上で
血を垂らし踊っている
その血、を洗うのは
いつの時代も
駅前清掃員の恋人
であって
十月、の晩は
早朝と同じくらい
救いがない
それでも、なお手渡せる血は残っている
文字通りに綴るあなたの、他人たちの血だ
#血液の帝国 A03
試しに
台所で、ピエトロ・ドレッシング
を一気飲みしては
嘔吐する
(わたし、が壊せるのは
(わたし、の手元に残った
(わたし、だけのこの身体
ジャスティスとして、会話
してもいいだろ?
十月はわたしの季節で
不吉なほど、息切れせずにいる
#血液の帝国 A02
他人から他人が
幾度となく溢れだし
等しく、沸騰した血を
売り買いしている
軒並み
パイプベッド
が白い布を纏って
ほとんど、病院かと思った
最初に言っておくが
俺ら、人民は
病院と学校に向かうための脚
なら、軒並み
骨折している
#血液の帝国 A01