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駄文 

信じられなかった。あれは全て夢だ。悪い夢を見て目覚めたところなのだ。
彼は未だに目を覚ましていないという。しかし、確かに見たあの深い傷跡は消え失せている。やはり夢だ。夢だったに違いない。夢じゃなければ、あの大怪我がそんなに早く治癒するとは考えられない。
だが、すぐにわたしのそんな僅かな願望は消し去られてしまった。

彼の兄が来て静かに口を開く。お前を巻き込んで済まなかった。あいつも俺と同じ気持ちのはずだ。そしてどうか、あいつが目覚める前にここから去ってほしい。彼はそう言った。

わたしは何も言えなかった。神殿で見たこと聞いたこと、全てにおいて現実のものとは思えない。夢だと思ってくれてもいいさ、そのほうがお互い幸せだ。彼はそうも言った。
彼の言葉にわたしは頷くしかなかった。

ふわふわと視界が揺れ動く。靄の中を歩いているように。
これもまた夢だったらいいのに。目覚めたらまた前のようにみんなで笑い合いながら街道を歩いているに違いない。こんな悪夢を見たと笑い話をしながら。

意識が遠のいていく。脳が完全に思考停止し始めていた。
そしてわたしは、それ以上考えるのを諦めてしまった。

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