この展示について少し感想を。自分はスカジャンが好きだし、図柄ごとにスカジャンが壁一面に並べられている空間は大興奮だった。 織都・桐生の職人が刺繍に関わった歴史、製造工程、現代作家の作品も楽しかった。我々がイメージする既製品のスカジャンだけでなく、セーラー服の袖に刺繍を施したり、あるいは所属部隊のマークを刺繍したスカジャンをオーダーするなどのアメリカの軍隊文化も面白かった。あれだけのスカジャンが公立のミュージアムで一堂に会することはもう無いかもしれない。来館者の層も広く、普段は来ない人でもミュージアムに親しめる展示だったと思う。面白かったがゆえにやはり残念なのは、現状に問いを投げかける性質がなかった点(公立館だし、博物館と美術館の性質の違いもあるだろう)。横須賀の文化が在日米軍の影響を大きく受けて発展したのは事実だし、その中で育まれたスカジャンを否定する必要もない。でも、日米行政協定をはじめとする不平等な現状を追認していいのか。最近の例で言えば、岩国で新車が盗まれ、事故られても弁償してもらえない状況でいいのか。→
本展はおそらく「技術」や「デザイン」に焦点が当てられていたが、スカジャンがかっこいいとか刺繍の技術がすごいとかそういう消費だけで終わっていいのだろうか。自分なら逆にスカジャンを通した社会史とかそういう視点で考えたい。スカジャンの周辺には我々が考えなければいけないことがたくさんあるはずだ。「異国情緒」とか「エキゾチック」とか(これらは観光パンフに載っていた言葉)、そういう言葉で終わらせてはいけないと思う。公立館に無理言うなという話だが、政治性を排除しているがゆえにとても政治的な展示だった。
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