もし日本がサイクルロードレースの強豪国だったら観戦を楽しめるかというのは常に引っ掛かっている。いかに魅力があろうと、恐らく楽しめない。
ツール・ド・フランスの特に重要なステージで、大統領を乗せた車がフランス人選手の背後にぴったりとついていた。あれは個人が国の威信なるものへ強制的に取り込まれていると意識させられる薄ら寒い映像だった。強豪国でない国で暮らしているからこそ、権力への帰属意識を高める報道や他者の熱狂から距離を置いて観戦できる。
もちろんピノも羊と戯れるのが好きな繊細で心優しい青年というだけでなく、矜持を持ってレースに臨んでいるのだろうけど。自分も選手たちに何かしらの理想を押し付けている勝手な視聴者の一人だ。