ちょっと補足を。
2023年の『Magic: The Gathering』は運営型の対人ゲームにおけるクィア表象の好例として、日本語圏ではあまりクィアな面に触れられないのもありここで取り上げさせていただきました。指輪物語コラボセットの「中つ国の伝承」でも人種表象のあり方が、ファンタジーを新しく定義するものとして好きでした(今回の新ファイレクシア篇のラストの展開は本当に雑で、クィア表象以外では文句しかないですが…敵の幹部四人のうち二人が内部処刑で消えるのは流石にどうなの)。『Thisty Suitor』はMCUや"エブエブ"に見られるアメリカの移民二世たちの物語のゲームにおける表現としてとても重要な一作でした。なんといっても主人公のバイセクシュアルな人生の表象が全面に出ているのが良かったです。また同作のライターのNadia Shammasさんは、アメリカンの方で、パレスチナでのイスラエル政府による虐殺に反対するゲーム業界の動きを作っている方でもあります。
『彼は私の中の少女を犯し尽くした』はどこかで紹介しなければ、と思っていたのですが、ここでこういう形で紹介できて本当に良かったです。(続く
クィアネスを考えないが故に、ミスジェンダリングになっているような誤訳も多く、訳語の問題も多かったです。AAAではないですが『Goodbye Voclano High』でノンバイナリーのキャラクターが弟から呼ばれる「Sibling」という性別を指さない言葉が「お姉ちゃん」と訳されているのは最悪でした(これはWezzyの連載でも触れました)。まきちゃんさんが書いている通り、日本でクィアなゲーマーをやっていくのは「ハードモード」です。
任天堂にもまきちゃんさんは触れられていましたが、日本の大企業のクィアへの軽視は翻訳にも表れていると思います(逆に日本語から他言語への翻訳でまともなクィア表象が生まれることもあるっぽいです)。これは日本のゲームコミュニティが今後クィアにどう向き合うかという問題を示してもいて、その意味でも4Gamerにこういう記事が出て良かったです。
クィアゲームとしてだけでなく、クィア表象、トランスジェンダー表象として本当に大事な作品の一つだと思います。とても辛いゲームですが、同時にこれはクィアやトランスの人々の間で交わされてきた会話の中にあった、中にしかなかった内容を語るもので、それはまた、本文で書いた通りゲームという形でしか語り得ないものでもあるのだと思います。この作品についてはもっと語りたいんですが、辛いゲームであることを前提に、プレイできる方にはゲームに興味なくてもプレイして欲しい作品。また翻訳についても触れましたが、記事に一緒に寄稿しているラブムーさんを始め、日本語でのクィアなインディゲームへのアクセスは、様々な有志の方の貢献によってなされているのだと思いますし、それ自体が日本のクィアなゲームコミュニティの希望だと思っています。
一方、総評では特にAAAタイトルの翻訳について触れましたが、有志の翻訳がクィアなゲームコミュニティの希望でありながらも、2023年のAAAタイトルの翻訳は日本の大きなゲームコミュニティがクィアを軽視している姿勢を感じざるを得ないものでした。(続く