特殊な木材と、印を刻んだ鉱石と、血で造る自律人形。
それを造る人形師。
人形を修復する人形調律師。
自律人形は東帝国諸島の歴史と密接な関係を持っており、工業用に特化したものから、人々の日常と密接に関わるもの、観賞用、芸術品とその種類は多岐にわたる。
その長い歴史の中でも、ここ数十年、一人の人形師の名が世間を騒がせていた。
生きながらにして『稀代の人形師』と呼ばれた人。
顔写真はおろか、本名や性別すら不明。
ただその人の創った人形は人間と遜色なく動き、語らうことができる。
その人形師の名は『黒鵜』
今は既に故人であるが、その作品は好事家たちを魅了して止まない。
これは人形師黒鵜と、黒鵜の遺した人形、そして黒鵜に縁ある人々の物語り。