SCENE7 ⑤
先日、怪異の姿となった三人に会ったことを一ノ瀬碧斗が皆に報告すると、西園寺サラと亘貴も同様に、隙間女のようになった日廻夏八と姦姦蛇螺のようになった阿墨修二に会ったという事実が共有された。
それらが本当に本人たちであったのかはわからない。
だがなんとなく、碧斗は本人たちであるという予感を持っていた。
「それから、その…阿墨さんが俺に近づいてきたとき、麻袋太郎が阿墨さんを攻撃したんだ」
「そこも同じですの!?サラの時もそんな行動をされていましたわ」
麻袋太郎は、サラに対しては好意的に接していたことにここにいる者達は気づいていた。
だから庇ったのだろうか?
だが、貴に対してそのような態度でいたことはなかった。
「麻袋太郎ってさ、なんで今までの人たちは助けなかったんだろ」
麻袋太郎が遠吠えをすると遺体は消えてしまう。
一連の惨劇に麻袋太郎が関与していることは、ここにいる者達にも想像がついていた。
麻袋太郎がサラ、貴、碧斗の三人を守ろうとした可能性は確かにあるが、命を落とした五人のことを思うと信じ切ることはできない。
考えた時に改めて五人の死を思い返し、何とも言えない気持ちになった。
SCENE7 ②
手に深々と刺さった鎌や、首に開いた穴を見て碧斗は恐ろしくなり、立つことができなかった。
彼を見ていると碧斗は何故だか、この世界から消えてしまいたくなった来ていた。
このまま殺されるかもしれない恐怖におびえながら暮らすよりも、いっそここで自害してしまえば楽なのではないか。
帰ることに意味など、あるのだろうか。
そんな考えが頭をよぎった時に出てきたのが、麻袋太郎だったのだ。
「シッシッ、お前は襲っちゃダメワウ!」
麻袋太郎に促され、天親のようなそれは、忌まわしそうな目をしながら、背を向けて歩き出した。
「いやほんと勘弁だって……」
立て続けに怪異になった元仲間達に遭遇したこと。
また、二人も怪異による犠牲になったことにより『次は自分なのではないか』という恐怖から、碧斗は疲弊してきていた。
今はあまり考え事をしたくない碧斗は、少し睡眠を取ろうと布団を捲る。
そこからひんやりとした冷気を感じた。
「…ん?」
???⑭
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昨夜未明、△〇駅入り口にて鴉羽雨之助さん(34)が遺体となって発見されました。
遺体に外傷は見つかりませんでした。
警察は事件と自殺の可能性を追って捜査を進めています。
被害者は先月から行方不明となっていました。
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昨夜未明、△×駅入り口にてシャーロット・ワトソンちゃん(6)が遺体となって発見されました。
検死の結果、遺体は凍死だと判明しております。
警察は事件の可能性を追って捜査を進めています。
被害者は先月から行方不明となっていました。
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鴉羽雨之助 死亡END
シャーロット・ワトソン 死亡END
???⑩
[夜]
どこからか笑い声が聞こえる。
寒い。
目を覚ましたシャーロット・ワトソンは酷い寒さに震えていた。今まで、この場所でここまでの寒さを感じたことはなかった。
そして目の前には、白い小人がいた。
シャーロットの服の裾をクイクイと引っ張るそれに、シャーロットは恐怖を覚えた。
誰も欠けていなかった頃であれば、楽しく話しかけられただろう。
夢の中のように、遊んでいたかもしれない。
だが、夢の中でこの怪異が自分や友達に酷いことをしていたのも見ていた。
無条件に楽しく遊ぶことのできる相手では、無くなっていた。
そんな思いからシャーロットが俯くと、その怪異は気を悪くしたようでシャーロットを恐ろしい顔で睨みつけた。
怖い、逃げたい。
このままではみんなを巻き添えにしてしまうかもしれない。
そんな、様々な思いが入り交じり、シャーロットは走り出していた。
雨之助の顔が浮かぶが、頼れる彼はもういない。
しかし涙が浮かんだその時、涙が冷たくなるのを感じた。
凍っている。
逃げられてなどいなかった。
???⑧
そうだ。あれは、雨之助の表情ではなかったのだ。
麻袋太郎が吼える中、鴉羽雨之助の遺体は消え去ってしまった。
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「…アメノスケ」
幼いシャーロットにも、状況が理解できてしまった。
立て続けに消えてしまった三人はいなくなってしまったのかもしれないと思い込もうとしていた。
しかし、冷たくなった鴉羽雨之助の姿を見た時に、現実を受け入れるしかなくなった。
「……もう、苦しまないでね」
シャーロットの記憶にこびりついた日廻と阿墨の悲鳴。
少しだけ見えた、暴れる天親の姿。
そして…静かに息を引き取っていた雨之助。
もう誰も苦しむことが無いよう、安らかに眠れるよう、祈っていた。
弔いの気持ちを込め折った折り紙の花を、そっと雨之助のベッドに置いた。
???⑥
貴とサラに連れられて雨之助のベッドに行くと、冷たくなった雨之助がいつものように寝ていた。
しかし、もう起きることはない。
二人が伝えたかったのはこれだったのだ。
なかなか起きない雨之助のことが気になり起こそうと揺すぶった際に体が冷たいことに気づき、もう生きていないことを確認したという。
では、シャーロットと碧斗が会っていたあの鴉羽雨之助は何者だったのだろうか?
そういえば、ジャック・オー・ランタンは嘘つきな怪異だという。
もし、彼も怪異となってしまっていたのだとしたら…。
いや、シャーロットはそれを確信していた。
何故ならシャーロットに向けていた先ほどの雨之助の顔は、いつもの優しい笑顔ではなく……
⚠ホラー注意
⚠創作企画です
当企画は完結しました
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