28日から年末年始休暇に入っていて、今日は3日目。
村の自治会長として年内に完了することを期待されていた仕事も今日で遺漏なく完了した。
ええとね、「管外協議費」と言って、集落に住んでいない人から、集落内に住宅・農地・山林を所有していることを理由として、自治会活動のためにお金を出して貰うのだ。33件あって、一番高い人は 37,000 円。この人は山林をたくさん所有している。一番安い人は、この人も山林にかかる協議費なのだが、 72 円。
このお金を集金するのが自治会長の重要な仕事の一つなのだ。集金と言っても、ほとんどの場合は、請求書を郵送して、指定の口座に振込んで貰う。72円の人にもそうして貰った。切手代や振込料を考えると割に合わないが、そこは、原理原則を貫徹する方が良いという判断である。
例外的に、何件かは、相手の人を訪問して現金で収受したり、知り合いの人に集金を委託しなければならない。
また、いつの間にか山林の所有者が交代しており、請求書が新しい所有者に届かなかった、みたいなこともある。今回、1件そういう例があり、若干あわてることになった。
(続く)
管外協議費のほかに「出不足金」の集金も、自治会長にとって、年末の気苦労の種になる仕事だ。
これは、集落で行った共同作業について、出て来なかった人にお金を出して貰うものだ。うちの集落の場合、年間に 4.5 日の共同作業があり、1日あたりの出不足金が 8,500 円(独居の女性および障害者は半額)なので、最大で 38,250 円という高額な負担になりうる。
出不足金は管外協議費とは異なって集落住民が対象である。ただし、都会に住んでいて、住民票上は集落住民でない人が出不足金を負担している場合もある。例えば、高齢の父母が集落に住んでいる、とか、もう誰も集落には住んでいないが住居と墓が集落に残っている、とかの場合だ。後者の場合、私はもう集落からは出ました、と言えば、出不足金の負担は求められない筈だ。私なら村を出たことにするだろう。しかし、墓がある、ということが大きいのかな、集落にはもう誰もいないのに 38,250 円の出不足金を払っている人が二人もいる。
共同作業に出なかった、と言うが、出たくても出られなかった場合も多いので、出不足金の集金は心理的にかなりストレスがかかる仕事になる。出来ればやりたくない。
(続く)
「管外協議費」があると言うことは「管内協議費」もあると言うことだ。
管内協議費は、世帯ごとの戸数割と農地割、山林割で計算する。戸数割は 8,000 円。農地割は 800円/10a で、これは管外協議費と同じ。山林割は 145円/山林地価で、これは管外協議費の 300円/山林地価 より安くなっている。
管内協議費は毎年5月に集金しているので、今回も、年末には何もする事は無い。
「管内協議費」「管外協議費」「出不足金」の集金が担当者である自治会長の心理的な負担になる理由は、イレギュラーな集金手続きを取る必要がある場合が必ずある、という事だけでは無い。それよりも、「私はそんなお金を払いません」と言う人が出てくる可能性が常にある、という事の方が大きい。
煎じ詰めると、それらの自治会費に正当な根拠があるかどうか、という問題だ。「いや、あなたにこのお金を負担してもらう正当な理由があります」と、自信を持って言い、相手を納得させることが出来るかどうか。
うちの集落ではないが、集落地内に工場を持つ企業に自治会費の負担を要望したところ、にべもなく断られた例もあると聞く。「それ、何か法律的な根拠でもあるんですか」と切り返されたら、おそらく、引き下がるしかないんじゃないかと思う。
(続く)
協議費の山林割については、実のところ、算定根拠が非常に曖昧だ。
一応、計算式はある。
・管外協議費(円) = 300円 x 賃貸価格(円)
・管内協議費(円) = 145円 x 賃貸価格(円)
で、「賃貸価格」って何? もちろん、その山林を貸し借りする場合の年間価格に違いないが、現在の価格ではなく、過去のある時点での価格であるに違いないこともまた確かだ。なぜなら、ある人の場合を例に取ると、賃貸価格が 11.43 円で、協議費が 3,429 円だからだ。
算定基準が「価格」であり「面積」でないことは納得できる。生えている木や林道の状態など、林業資産として見た山林の価値はさまざまであるから、農地のように面積だけで考えるのは不適切だ。(農地の場合も厳密に言えば価値に差があるが、山林ほどではない)
しかし、問題は、自治会が保管する文書の中から、山林の賃貸価格を記した資料を探し出せなかったことだ。それでは困るので、自治会長の諸先輩に訊いてみた。すると、いや、そういう資料は無い、山林割賦課金の一覧表があって、そこに賃貸価格が書かれている、それだけだ、と言うのである。
だから、山林割について、もし負担者から疑義を呈されたら、非常に困る。ひたすら低姿勢でお願いするしかないことになる。
(続く、かな)
田舎の自治会の協議費(自治会費)は、法律的にはどういう扱いなのだろう。
1) 私的な契約に基づく債務
2) 任意の寄付金
前者はちょっと無理があるかな。どちらにせよ、払う側が「いやだ」と言えば成立しないものだ。
実態としては、
3) 税
が一番近い。
法律で明示的に定められている訳ではないが、成員にとって否応なく徴収される所は同じだ。
しかし、徴収の仕方と使い途について住民が直接に合議で決することが可能であることを考えると、国税や住民税より遙かにましだと言える。
例えば、我が集落の「出不足金」の1日当り単価は、かつては一律で 8,000 円だったが、協議した結果、独居の婦人と障害者については半額になった。また、集めたお金の使い途については、年に一度決算報告をする。おかしな事をしていると必ず質問攻めに遭う。
田舎の集落には、都会の住人が思っているのと違って、非常に民主的なところがある、と思う。
一方で、異分子を排除する圧力は田舎の集落の方が圧倒的に強いだろう、とも思う。まあ、うちの集落などは、高齢化と人口減少に悩んでいるから、もう、誰でも良い、村に住んでくれ、ややこしいことは言わない、という感じで、かなりユルユルになっているけれど。