マリアーナ・エンリケス短編集『寝煙草の危険』(宮﨑真紀訳、国書刊行会)を読み終えた。5月の発売時から積んでた本。内容に触れる感想は別途CWにて記載。

アルゼンチン発のホラーを読んだのは初めて。これまで読んできた英国などのゴシックホラーとは異なる印象を多く受けた。テーマやキーワードが共通でも、風土の影響は強いと思わされる。

英ガーディアン紙でカズオ・イシグロが2021年ベスト作品に挙げ、ブッカー賞のショートリストに残るなどかなり評判の作家だったので邦訳を楽しみにしていた。スペイン語圏の怪奇・ホラー作品もこれからもっと読んでいきたいと思った。

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『寝煙草の危険』内容含む感想 

マリアーナ・エンリケス短編集『寝煙草の危険』収録の物語12篇はすべて、語り手「わたし」がいるタイプの話で、筆者と同じく女性の視点で描かれていた。

ホラー要素とアルゼンチンの社会的要素(社会的弱者ーマイノリティ、人身売買、路上生活者、ストリートチルドレン、性被害等)が強く結び付いていると思った。呪術、超自然的要素とともに現実を強く意識させられることが、話をよりぞっとするものにさせている。

『ショッピングカート』では、呪いに加え、貧困と近隣住民による相互監視社会が描かれる。
『戻ってくる子供たち』では、虐待、ペドフィリアなどの被害にあい行方不明になった子供が、まるで失踪時で時間が止まったかのような姿で続々と帰ってくる。
『展望塔』では、性被害の記憶から立ち直れないでいる女性が、人ならざる者の手中に落ちる。

日本の伝承に影響を受けたような表現もあった。

女性性のテーマも多く出てくる。
何度か出てくる女性の自慰行為の描写に関しては、少々苦手意識が発動した。それは多分、私自身が親から教えられた古い時代の価値観から完全に脱却できておらず、これらをどこか汚れたもの、忌避すべきことのように思ってしまっているためかもしれない。

📸p224から。『戻ってくる子供たち』の一部

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