翻訳が原著を上回っていると思う本はそう多くない。
その中の一つが、久野暁子氏によるビアトリクス・ポター『妖精のキャラバン』。ピーターラビットシリーズより後に出された児童書で、これも動物たちの話となっている。
訳文は過度な節回し・癖を出すことなく淡々と訳したように見せつつ、実際には原著以上の魅力を作ることに成功している。
その理由は、日本人が日本語の調子から感じとることができるユーモアが有効に活用されていることにあると思う。英語にも確かに女性の使う表現男性の使う表現で差はあるが、真面目くさったものやおしゃべりでお節介なおばさんらしい言い回し等は原著以上におかしく感じられた。自分が日本人ということはあるが、その点で大幅減点してもなおそう感じる。
更に、固有名詞に含まれる英語表現の訳し方もおもしろい。
個人的には猫の姉妹の名前をルイーザ・ネココさんとマチルダ・ネココさんと訳したこと、都市名をニャンチェスターとしたことに感銘を受けた。
他方、上記固有名詞を訳したのに、なぜtoad stoolをそのままカタカナにしたのか不思議に思った。
画像は紀伊国屋書店ウェブから。