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「シャンプーの香り」

 好きな子からふわりと匂うシャンプーの香りほど心踊るものはない。ただ相当近づかないと匂いを嗅ぐなど不可能だし、悪戯な風が揺らした髪が鼻先を掠めるなんて機会はそうそう訪れやしない。
 それにもうひとつ、相手が自分より背が高いと難易度はさらに跳ね上がる……はずだった。
 練習試合からの帰り道、電車に並んで座って今日の試合内容の話をしていたのに途中から返事が返って来なくなったと思ったら肩に重みがかかる。俺に対して遠慮がないせいで、ちょっともたれ掛かるなんてものではなくがっつり肩に頭が乗っている。汗と制汗剤の匂いに混じって少し甘い匂いが漂ってくる。きっとお高いシャンプー使ってんだろと思ってたけど高いかどうかは知らないがめちゃくちゃいい香りだ。16センチ差をあっという間にチャラにした男は無防備そのもので、こんなこと誰にでもやってるんじゃないかと心配になる。
この先もアンタの隣は譲りたくないななんて思いながら目を閉じて、三井サンの方に頭を傾けた。

(お題.comさんからお題お借りしました。)

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