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パレーノ展に行ってきた。最初の部屋にはヘリウムで満たされた金魚の風船が宙に浮かび、空気の移動や観者の行為にともなって金魚もまた移動する。そこでは、環境と作品とが連続しあい一体をなしている。こうした作品とその外部環境との連続性は、今回観たほとんどの作品において通底していた。

《マリリン》の映像では、マリリンが実際に滞在した高級ホテルが映されていたが、それが終盤でセットだったことが暴露され、映像内で登場するドローイングもまた、その主体がマリリンではなくロボットだったことが明かされる。あるいは、画面内から聞こえてくる鳴り響く黒電話の音と、まさに同じ音が後ろのスピーカーからも流され、反復される(前者は意味づけされた表象としての音であり、後者はたんなる電話の音である)。

フィクションとリアル、作品の内/外を次々と反転させるこうした仕組みは、《マリリン》の上映が終わり、展示室の外に設置された《ヘリオトロープ》が駆動しはじめるとき頂点に達する。
《ヘリオトロープ》のインスタレーションでは、通常美術館では忌避される太陽光を作品を通して空間内に取りこみつつ、他方で美術館の外部環境からフィールドレコーディングされた音(鳥の囀りや川のせせらぎ)がスピーカーを通して再生される。そこでは美術館の内/外を連続させるとともに、美術館の外にある自然が観るべき対象となる。すなわち、視野の外にあった自然が鑑賞の対象へと反転するのだ。と同時に、いままで鑑賞の対象だった《マリリン》のインスタレーションが今度は、自然を見るための舞台(環境)へと反転することになる。

ドローイングのみで構成されたインスタレーションも同様である。この部屋では、展示ケースのガラス面とケース内の双方に作品が設置されており、照明の明滅に合わせてドローイングが現れたり消えたりする。そこでは作品の内と外(いわば図と地)が交互に反転する。

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