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笹帽子/笹幡みなみ さんがブースト

『声百合アンソロジー まだ火のつかぬ言葉のように』ストレンジ・フィクションズ 感想
https://note.com/strange_fics/n/nac3e1474f678
https://booth.pm/ja/items/5087793
縁あって購入し読んだんですが、薦めてくださったいかずち木の実先生のおっしゃったとおり大変ハイレベルな短編集でした。え、百合アンソロジーってどれもこんなレベルなの? 強……こわ……。
傾向としてはダーク/陰鬱系が多かったんですがそのためもあってか「ポストカード」の明るさが際立っていた気がします(順番に読んだのでその時点ではそう思わなかったんですが)。
表紙も明るいしかわいくていいですね。赤い糸がだるだるで糸電話が機能しているとは思えないんですが(なんなら指でもてあそばれてるし)、そもそも語りかけると聞こえる距離にいるっていう。

「貝と耳鳴り」紙月真魚先生
ささやかなはずのものがささやかでおさまらない凄みのある話。これ朔がとうとう屈して死を決断する心理の話にすごい説得力を感じる層がいると思うんですよねぇ。その層がどれくらい分厚いのか私にはわかりませんが、すくなくとも私は大変よくわかりますと言わざるを得ませんでした。ラストの再会からの対話は、彼女らのささやかな能力というものをここまで拡げられるのかという感嘆が情景描写と結びついて大変すばらしかったです。

「今日の声は聞いてないから」笹幡みなみ(
)先生
おもしろすぎる~~。まず形式に「おっ」と思わされ、その形式が採用されている理由がくっきり示されて「おぉ~~~」と思わされ。これアレクサが反応してるところを見るに最初はちゃんと聴いてたし視聴者もいたんですね。油断していたのか実在確認してからでもなんとかなると割りきっていたのか。怪異に気づいてからの対応はお見事ですがきょうのあつかいが雑すぎる。「まあ死なんやろ」みたいな勢いを感じる。このへんの信頼関係が……百合……?

「ポストカード」孔田多紀先生
この本を読むきっかけになった縁というのがこの作品です。文献リスト内でタイトル浮きすぎだし引用された量よりはるかに長いの申しわけないけど笑っちゃう。pixiv版タイトルはもうちょいみじかくするので赦して……。
主役のアリスとサクラはもちろん登場人物たちがほんとうにいいですし、物語をつくるときの流れというか心情というかの言語化という面で目をみはるものがありました。亜幌さんと白末さんの会話もそのあたりを補強してますし実在する話をモチーフに持ってきているので説得力がありますよね。出来上がった物語も部分とはいえ筆力が活きまくり。そのうえでなんといってもラストの言葉がよすぎますねぇ……。気づいてないのはアリスだけ。それは誰の気持ちについて言ってるんですかねぇ。

「壊死した時間」茎ひとみ先生
こういう話だとはまったく予想しておらずそりゃもうたいそう動揺させられました。どこから狂いはじめていたんだろう? 彼女はいまどこにいるんだろう? なんもわからん。こわすぎる。一見唯一確かなものっぽいスマホアプリもなんか変なんですよね。「鏡に映った」ってそれマジで言ってる? そんなのアプリが知るわけないじゃん。「へー便利なものがあるんだなー」とか思ってた無邪気な私を返して……。

「ミメーシスの花嫁たち」織戸久貴先生
難解な作品です。読んでいてよく迷子になりましたし、再読する必要も感じます。ミメーシスという言葉の質感はここ数年で一気に変わってしまった感がありますが、そういうところに踏みこんだ作品のようでありそこまで本質的でもないようでもあり。とはいえ最後に声と言葉をかわしているふたりは消費期限がきたら何度でもやってやろうと笑いあっているようで、前向きですよね。その前向きな明るさはいいなと感じます。過去ではない方向を見てるのが。

「声豚」千葉集(
)先生
声豚……こ、声豚だ! これはヤンデレにカテゴライズしていいんですかね……? 仮にそうカテゴライズしたらそのジャンルに岩石ぶちこんで津波を起こすような作品ですよね。ほなヤンデレちゃうか。異常に解像度の高い(いや実物をよく知らないのでわからないんですが)カルトの描写とかカルトと親和性の高すぎる切毛のイカレっぷりとかいろんなところに異常なパワーがみなぎってて金平糖かはたまたウニかみたいな作品でした。

「溶けて、燃える」谷林守(
)先生
好き。よくぞこの作品をラストに持ってきてくれました。声百合アンソロジーと聞いて最初に思い浮かべるタイプの作品をごくすくない字数で愚直にやっていて、ひねりまくった作品が多数というかほぼぜんぶを占めるこの本において逆に鮮烈な輝きを放っています。後輩ちゃんの告白に至るまでの語りが最高ですし、ラスト一文もいいですよね。声は振動ですから。いやーいい本だった……。

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