【感想】『生まれつきの時間』ファン・モガ 廣岡孝弥 訳
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inch magazine PocketStories 01 生まれつきの時間 | inchmag powered by BASE 「短篇小説をポケットに」inch magazine PocketStories第一弾は韓国SF短篇小説。人類が一度滅亡したあとの世界。「成長センター」で目覚めたアルムはすでに十五歳だった。生殖能力をなくした人類を再生するプログラムで急速な教育とリハビリを与えられたアルムは、ある日センターを逃げ出すが……。2019年に韓... inchmag.base.shop文学フリマ東京37にて入手。
「成長センター」で目覚めた主人公は、産声を上げるかのように初めての言葉を発する。主人公は自分が十五歳であること、長い眠りから目覚めたところであること、眠っている間にも教育を施されていたことを告げられる。
ポストアポカリプス・ディストピア的なふんわりとしたSF設定を通じて(ふんわりとしているところがよくて、SF設定を詰め過ぎない良いバランスがあると思った)、成長することへの強迫、「生まれつきの時間」を持てないということ(あるいはあとからそれを生きること)が寓話的に描かれる。悲しさや悔しさに満ちた世界の話ではありつつ、主人公の選択に一縷の希望を感じさせる優しさがあった。後半の対談において「止まる、戻るという部分に心の豊かさがある」という読み方が言及されているけれど、自分にはそれがとてもしっくりきた。