爆発のすぐあと、ラジオから流れたアナウンスを聴いた人がいた。
その人は、哀しい声の記憶が忘れられず、あの声の主を探してほしいと、のちにNHKに手紙を送った。
幻の声に翻弄されながらあの日を追想する、17年にわたる取材をまとめたルポルタージュ。
「幻の声 NHK広島8月6日」何度かRTしてるのですが、原爆関連としてはやや異色で、爆発直後にラジオから流れた声の謎を追うという、冷静に焦点の絞られた、それだけに深く切り込んだルポ。生き残った人達の戦後の話でもあり、原爆が落ちた瞬間と、今現在を繋ぐような感覚がある。
原爆投下後も広島にはまだ生きている人達も大勢いたんですよね。何が起きたかも分からず、その先の苦難を知るすべもなく、ひたすら生きようとし、また職務を果たそうとしていた人達もいた。原爆落ちて終わりではなかった事がわかるいい本だと思います。
幻の声はどちらかというと他の原爆関連資料の間隙を埋めてくれるようなタイプのものなので、今まで色んな資料に触れてきた方にもおすすめ。戦時下のメディア、とくにラジオ放送に興味がある方もどうぞ。
「幻の声 NHK広島8月6日」白井久夫/岩波新書(1992)
https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b268055.html