生まれてはじめてサーカスを観た日に脳内に飛来した則清
これはショー。観客を沸かせるための、演技にすぎない。
清光はいつも、そう言い聞かせて光の中に進み出る。すべて演技…薄浅葱の瞳を熱っぽく見つめるのも、空中で絡みつく時少しだけ力を込めてしまうのも。
則宗と清光は、空中パフォーマンスを得意とするパフォーマーだった。同じサーカス団に所属し、共に芸を磨くうち、相性の良さを見込んだ団長からペアを提案された。結果は上々、二人のパフォーマンスは一躍サーカス団の目玉として有名になった。
だから…この感情は、切り離さなくてはならない。
宙ぶらりんな恋愛感情を抱えたままできるほど、簡単な仕事ではない。
いつからだろう。演技のはずの視線に、熱が混ざり始めたのは。
いつからだろう。抱えられて空を舞う時、このまま離さないでと願うようになったのは。
こちらがこんなに心を揺らしているのに、今日も則宗は波ひとつない穏やかな瞳で、清光を見つめる。
割れんばかりの拍手や歓声が、ひたすら耳に痛かった。