ろっか @rokka_67@fedibird.com

そんな日に限ってくる男、それがアルウェス・ロックマンです

「好きだよ」
耳元で囁かれた言葉に心臓が一つ跳ね上がる。熱を帯びた吐息は耳を悪戯にくすぐり、鼓膜を響かせる低い声は甘く脳髄を刺激した。
「好き、好きなんだ」
捻くれ者の彼にしては随分と素直な言葉。私に伝えたいというよりも、心の内に秘められた想いを囁いているように聞こえる。
「ヘル…愛してる」
甘美な想いに溺れそう。私を真綿のように優しく縛り付けて、毒のように全身に広がって指先一つ動かすことができない。
自由が効かないなんて不快なはずなのに……もっと欲しいと心が求めている。
「ロック……マン……」
「ヘル……」
赤い瞳が優しく蕩けている。白い瞼の内側に隠して、美しい顔が近付いてくる。
期待から彼のシャツを掴み、そっと息を吸う。唇に触れた柔らかな熱が擦り寄ってきて、舌が開けと割れ目を突いて、そして――。

チュンチュンと小鳥が爽やかに鳴いている。見慣れた木目に朝が来たのだとノロノロと頭が再起動し始めた。
「あの……くそやろう……」
顔を両手で覆えば、熱でもあるかのように冷たかった手のひらがすぐに暖かくなった。
あんな夢を見るとは、恋する乙女とはなんと厄介な。
今日は来ませんようにと祈りながら、私は夢を振り払うべく顔を洗う水を汲みに起き上がった。

眼鏡が壊れてしまった6（近視）
放課後買いに行くから7ちゃんに付いてきて欲しいとお願いした。
7「なんで私なのよ」
6「僕からじゃ、似合ってるかどうか鏡見ても見えないから」
7「だからって私じゃなくても……って、近い近いっ！」
6「このくらい近づかなきゃ見えない」
言っていることは本当なのか、目を細めて睨みつけるように7ちゃんを見つめる6。近すぎる距離に戸惑って大騒ぎする7ちゃん。
結局、根負けして付いていくことになった7ちゃんは、眼鏡屋まで行くまでの道中危ないからと6の手を引いて歩いていたのを同級生に目撃され、次の日放課後デートしてたと大騒ぎされた。

6の小さい頃にそっくりの息子を寝かせ、慈しむように微笑む7ちゃん。
ふと、小さい6と手を繋いだときのことを思い出して小さな手を自分の手で包み込めば、反対側の手が大きな手に繋がれた。
7「なにしてんのよ」
6「……なんとなく」
6も6であの日のことを思い出して、繋いでしまったのだとか。