小人の魔法読み直して浮かんだネタ
「好きだよ」
耳元で囁かれた言葉に心臓が一つ跳ね上がる。熱を帯びた吐息は耳を悪戯にくすぐり、鼓膜を響かせる低い声は甘く脳髄を刺激した。
「好き、好きなんだ」
捻くれ者の彼にしては随分と素直な言葉。私に伝えたいというよりも、心の内に秘められた想いを囁いているように聞こえる。
「ヘル…愛してる」
甘美な想いに溺れそう。私を真綿のように優しく縛り付けて、毒のように全身に広がって指先一つ動かすことができない。
自由が効かないなんて不快なはずなのに……もっと欲しいと心が求めている。
「ロック……マン……」
「ヘル……」
赤い瞳が優しく蕩けている。白い瞼の内側に隠して、美しい顔が近付いてくる。
期待から彼のシャツを掴み、そっと息を吸う。唇に触れた柔らかな熱が擦り寄ってきて、舌が開けと割れ目を突いて、そして――。
チュンチュンと小鳥が爽やかに鳴いている。見慣れた木目に朝が来たのだとノロノロと頭が再起動し始めた。
「あの……くそやろう……」
顔を両手で覆えば、熱でもあるかのように冷たかった手のひらがすぐに暖かくなった。
あんな夢を見るとは、恋する乙女とはなんと厄介な。
今日は来ませんようにと祈りながら、私は夢を振り払うべく顔を洗う水を汲みに起き上がった。