1月下旬、某日。次の休日はデートをしませんかと恋人にお伺いを立てると、笑顔で一蹴された。
「バレンタイン前で忙しいから無理!」
付き合いの長さに反比例して滅多に見られない満面の笑顔は大変愛らしかったが、内容は全くもって可愛らしくない、それどころか憎たらしいものだったので、すべすべの頬を反射的につねった。
当然、お付き合い5日目の恋人の機嫌を損ねて喧嘩に発展した。
舌が肥えてるあんたに渡すチョコの試作をするんだから本当に忙しいの、とヘルが眉を吊り上げる。
僕は君から貰えたなら焦げていようが生焼けだろうが塩が入っていようが完食するけど。
それらの仮定は告げず「勝負じゃないのにそこまで気合いを入れる必要があるの?」と、やんわり尋ねる。チョコをくれるつもりがあるのは嬉しいがデートを断られたのが結構悲しかったので。
するとヘルはきっぱりと。
「あんたにあげるんだから妥協出来る訳ないでしょ」
「……そっか」
「あと百貨店回りたいし」
「ん?」
「この時期にしか日本に来ない海外のパティシエさんが沢山居るの」
「ヘル?」
「催事場って太っ腹よね、まるまる一粒試食させてくれたり」
うっとり夢見心地で語るヘルに、そっちが本音だな、と僕はもう一度まろい頬をつねるべく手を伸ばした。
#1T67SS
自分のだって選びたいじゃない
@rokka_67 美味しいものを知ってる6を唸らせてやる!という気持ちも勿論あるんですが、本音(タイトル)がだだ漏れました笑
今のとこ、6より年に一度の催事の方が優先度高いので、6はだいぶ面白くないです
確かに!デートを諦めたくない男なので「分かった、催事場でデートしよう」とか言い出しそうですね🤭