「お前馬鹿なの?」
「馬鹿って言った方が馬鹿なんだからね!」
ドカンと炎と氷をぶつけ合う。捻くれ者の従兄弟の恋は、暗黙の了解だった。
従兄弟の想い人はナナリー・ヘル。珍しい氷型の少女で平民だった。貴族ばかりがいるクラスで萎縮するかと思いきや、隣の席の従兄弟がちょっかいを掛ける為変に浮く事もなく、(無駄に目立ってはいたが)クラスに馴染むのも早かった。
あいつらは馬が合うのか合わないのか、しょっちゅう喧嘩しては髪を燃やしたり、腕を凍らせたり。端から見てもお互いに特別視している事は明白だった。
学年が上がり、互いに呼び名が変わっても二人の関係は変わらず。そうなるとナナリーを敵視する子女達も出てくるが、その辺りの対応は流石にあいつだった。
「おいアルウェス、あまり一人に構い過ぎるなよ」
「はぁ…仕方ないんですよ、殿下。僕は鬱陶しいのを追い払ってるだけなので」
ほとほと迷惑しているんです。そう言う顔は嬉々として、ずっと唯一人を映していた。最初からずっと今日に至るまで。そしてきっとこれからもずっと。
「程々にしておけよ」
「ははっ、で「ようやく見つけたわよ!! ロックマン勝負!!」
「何、馬鹿氷」
うきうきしてる顔、全然隠せてないぞ。
#1T67SS