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澤村伊智「ししりばの家」読了。ネタバレ 

五十嵐と琴子のサイドと、果歩達のサイドとのストーリーが交錯しながら進んでいく。
五十嵐の側は前向きな印象も与えつつ終わるが、果歩の側のストーリーは後味の悪さが強い。果歩の行動については、何故そこでわざわざ再訪してしまうのかと疑問なところはあるが、少し気持ちが通じそうだった夫は退場してしまうし、ラストも不穏そのものだしで、読みながら理不尽さを感じるというか…。果歩を含め、さしたる悪行を働いたわけではないように見える人間たちが一緒くたに取り込まれてしまい、そのまま誰にとっても救いなく終わる。良くも悪くも因果応報なんてことはなかなかないこの世の中を思うと、この理不尽感こそホラーなのかもしれない。悪事に報いがあるのなら悪いことをしなければ大丈夫と思えるけれど、そういう逃げ道もないのだから。
さらには、ししりばの影響ではなく「普通」に過ごしていたはずの一家の異常さなども垣間見えて、詳細が語られないだけにこれもまた一層怖い。「どこの家でも、誰にでも」起こるかもしれないことなのだ。

それにしても、犬が怪異に強いのは昔からのお約束なのか、犬登場の安心感はすごい。老犬なのに、駆けつけてくるシーンはとても頼もしい。犬、いいなぁ。

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