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佐藤青南『犬を盗む』読了。それほどネタバレしていないと思うけれど… 

読みやすい感じのミステリー。
ミステリー部分の意外性については、個人的には多少想像できてしまった部分もあってまあそれなりに、というところだったのだけれど、ところどころに犬の視点での語りがあったりして面白い。犬から見たら、飼い主や周囲の人間はこんな風に見えているのだろうかと考える。完全に意思の疎通ができるわけではないけれど、通じ合うものもあるという、微妙な関係。犬は全てを見ているけれど、人間はなかなか真相にたどりつかず翻弄される。
結末の後、人間の登場人物たちにとってはこの先もいろいろあるだろうが、人間の都合や事件に巻き込まれて振り回された犬は、幸せに穏やかに暮らしてほしいもの。

また、普通の人、むしろ真面目な人に見えていた登場人物の一人が、ネット投稿などがきっかけで徐々に偏執的になっていく様子には、ちょっとぞっとするものがあった。「満面の笑み」がなかなか怖い。
最近ありがちな、ネット中心の過度な叩きなどの問題にもつながるところがある。自分は間違っていないという信念も善し悪しだと、あらためて思う。

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