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恩田陸『Q&A』読了、少しネタバレ感想 

タイトルの通り、ひたすらQ&A形式で話が進む。主にある事件についての聞き取り調査のような形で、事件関係者となったさまざまな人から話を聞いていく対話形式が続く。
質問に答える人間はどんどん変わっていく。それぞれの視点の話をつなぎ合わせると、どうやらこういうことかと見えてくる(気がする)部分もあったり、つなぎ合わせても最後までどうにもはっきりしない部分もあったり。

結局あれは何だったのかという部分も最終的に多々残るため、推理小説的に明快な解答を求めて読むとスッキリしないけれど、淡々と語られるQ&Aの中のあちらこちらから人間の怖い一面が顔を出しているようで、ゾクッとするものはある。
普通のやり取りをしていた人から次第に歪んだところが見え隠れし始める会話、ごく普通の日常が壊れていく心理、集団となった人間が些細なきっかけで転げ落ちるように異様な状況に陥っていく様子など、負の側面の描写がひたひたと迫る。
ストーリー全景の曖昧さとは裏腹に、いやむしろ全貌が漠然としているからこそなのかもしれないが、「こういう人間の怖さは、わけのわからないうちに普通に自分の目の前にも現れるのではないか、あるいは、実は既にそこにあるのではないか」という身近な恐怖感を呼ぶ。

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