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リチャード・パワーズ『ガラテイア2.2』読了 

主人公は人工知能ヘレンを育て上げていく。ヘレンは徐々に人間らしくなり、愛について質問したり、意識らしいものを持つようになる。
無垢な子どもから大人になっていくようなヘレンが魅力的。個人的には、主人公やその恋愛相手よりも「人間」に思える部分があった。(主人公の恋愛がずっと並行して語られるが、そのあたりが合うかは人を選ぶかも。個人的には少々きつかった…)

また、二人の男の挿話が印象に残る。
外の世界を語り聞かせる窓辺のベッドの男と、外が見えないベッドで聞く男。ある時、語る男が発作を起こす。空いたベッドに移って、聞く男がはじめて見た外の世界は、煉瓦の壁だけだった。

たった二頁の挿話だけれど、本編もこれをなぞるように続く。
英文学、愛、世界について、聞かせる主人公。それを聞くヘレン。とうとう「窓際のベッドに移してもらった」ヘレン。
「わたしの代わりに世界を見てきて。」最後、ヘレンはどう思ってそこに至ったのだろうかと想像する。

人間と人工知能は何が違うのかという素朴な疑問が湧く。
理不尽さや勝手なところだらけなのが人間なのだろうかとも思うが、ヘレンの方がよほど好ましい人間らしさがあるようにも思えて、では我々人間はどう生きるべきなのだろうかとも考える。

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