米原万里「ロシアは今日も荒れ模様」。
ウォトカが好きで大雑把、でもどこか人が好いロシア人の人物像が鮮やかで、ロシアへの愛情が感じ取れるエッセイです。本書は1998年刊行で、ソ連崩壊の頃のこともたくさん書かれていますが、激動の時代を経た人々のたくましさはすごい。
著者が出会ったいろいろな人のエピソードが出てきますが、エリツィンにゴルバチョフ、ロストロポーヴィッチ、タクシー・ドライバーに日本語ガイドに…といった具合で、有名人も一般人もとても個性豊か。
「ペレストロイカ」などの言葉を大昔に受験勉強で丸覚えした程度の自分にとっては、ロシアの政治家はテレビの向こうの人物でしかなかったわけですが、当然ながら彼らだって、良いところも面白いところもダメなところもある一人の人間なのだとあらためて思わせてくれます。
そしてきっと、ロシアだけでなく、どこの国の人だってそうであり、それぞれに魅力的なのだろうとも思います。
一方で、世界の現状を思うと…。一人一人が魅力的で良い関係を築ける相手であっても、国と国の問題が大きくなると良いところが見えにくくなることもあるでしょう。
このエッセイが書かれてからもう20年以上で、著者の米原万里さんも既に亡くなっていますが、もし現状を見たらどう言われるだろうかと複雑な思いです。
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