蛇足を少し。「エルピス」の初回、オープニングで参考文献として実在の冤罪が疑われる事件に関する書籍があげられているのを見て、強烈な違和感を感じました。エンディングならともかく、人気俳優が出演する民放のドラマのオープニングに、原作本でもない参考文献を毎回あげる意味はなんだろう。
そこには、視聴者に、現在進行形の冤罪事件の存在を知ってほしいという願いが込められているのではないか。ドラマの中で村井や岸本が真実を伝えたいという欲望のために大門を死なせたように、佐野さんや渡辺さんが現実の事件をコラージュするという方法を選んだのはそのためではないか。
凄惨な事件が起きると、僕たちは怒り犯人を捕まえて死刑にすることを求めます。しかし時間が経つとそんな事件のことなど忘れ、次の事件へと関心を移していきます。あれだけ騒がれたオウム事件のこと最近思い出しましたか?参考文献に掲げられている事件の概要って言えますか。
直接の加害者でも被害者でもない僕らは、そうやって消費し忘却しながら生きていくのですが、このドラマを最後まで楽しんだなら、「続編希望!」などと無邪気につぶやく前に、せめて参考文献の一冊でも手にとり少しだけ立ち止まって考えてみたらいいんじゃないか、そんなことを思いました。
#エルピス