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月の姫は太陽の君に嫌われたい 

初めて見た時、なんて美しい色かと思った。
月のような金糸なのに力強い色合いに燃えるような赤い瞳はまるで太陽の熱を宿すように。
太陽の国の人はその身に太陽の力を宿すと言うが、まさにこの生命力がそれなのだろう。
しかし、今、強すぎる生命力はこの美しい男を苦しめていた。

太陽の君と言われる太陽の国から婿入りしてきた青年アルウェス・ロックマンは観例に漏れずその国で力の強いものなのだろう。
私達二人しかない月に抱かれた静かな寝室はその見た目にそぐわないほど温度を上げていた。
力の強いものが月の姫に婿入りするのには訳がある。
月の国は冥界を封じる扉の門番の役割をしている。その扉を封じるために絶えず魔法陣に魔力を供給する。
その魔力は月の聖杯から生み出されるが、その聖杯には太陽の雫が必要なのだ。
「アルウェス、私はこのためにいるのよ。我慢せずに私に触れて」
仕来りに逆らえずに、こんなところへ婿入りさせられた可哀想なアルウェス。
聞けば想い人が国にいたのに、会ったこともないのに特になにかに秀でたこともない怪しい国の姫に婿入りさせられたのだ。
貴族はそんなものだと言っていたが、それでもせめてこの国にいる恩恵は受けて欲しかった。
膨大な力に押しつぶされる前に月姫によってアルウェスの力は

月の姫は太陽の君に嫌われたい② 

魔力に変換されるのだ。
つまり聖杯とは月姫であり、その聖杯を満たすのが太陽の君である。
強大な太陽の力はアルウェスの寿命を縮めて生命を逆に脅かす。
だからその命を燃えつきさせないために、月の国へとやってくる。
そのためには私という聖杯にその太陽の力を注ぐ必要がある。
方法は沢山あるけれど、一般的な方法は夜を共にすること。
しかし、初めての日にアルウェスは「これは僕のわがままだけれど、こんな形では望んでいない」と。
彼が私を望まなくても、私は彼を望んでいたのだ。だから…
「大丈夫よ。アルウェス。ここで役割を果たしたとしてもそれはただの仕事よ。別にアルウェスの心を縛ったりなんてしないから安心して」
「ナナリー?」
汗を額に滲ませて、私を見るアルウェス。
早く解放してあげようと手を伸ばせば、指を絡められて引っ張られる。
引き寄せられた身体は柔らかな寝台の上に沈む。

正気に戻ったアルウェスに、詰られたとしても私は私の太陽を失う訳にはいかないのだ。

太陽の君は月の姫に嫌われたくない 

彼女に義務を押し付けて、自分のために彼女を犠牲にすることは僕にはできなかった。

それなのに
力の暴走で意識が混濁したあの夜…

目覚めたアルウェスは記憶がないことを不思議に思いながら、寝台に横たわる愛しい空色に絶望にも似た心地になった。
すうすうと穏やかな寝息を立てて眠る女性は差し込む月の光に照らされて殊更美しい。
しかし、その素肌に散らばる生々しい赤と、アルウェスの太陽の力を受け止めたためか寝台の白いシーツに広がる彼女の美しい空には赤や黄色といった夕焼けが混じったような色合いをしていた。
強い後悔に苛まれながらも自分の色を混ぜた彼女に愛おしさは溢れてきて。

そのあと起きた7ちゃんは恥ずかしそうにしてるけど、仕方ないわ。そういうものだしって感じなので自分を大切にしろって説教するし、それに対して「アルウェスだからだもん」って返り討ちにあったり、自分の色と混ざりあった彼女の様子は誰にも見せたくないので今日はずっと部屋にいて…って夫婦のお部屋でイチャイチャしたり落ち込んだり、励まされたりする6がいる。
6の向こうの国での想い人の件は7ちゃんの事だったりして誤解はそのあと無事に解けて太陽の君の月の姫に対する溺愛が大変なことになると思う。

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