毒を食らわば
その日、ハーレにウェルディさんが来て言った。
「最近、隊長の近くに変な女がいるのよ。ヘルさん、何か知らない?」
なんで私が知ってると思うのかと、思わなくはないが原因は恩賞を義でやってしまったロックマンに対する公開告白である。
あれ以来あらゆる人達に私たちは付き合っていると誤解されることが増えた。
別にそんなつもりはなかったし、ロックマンとは飯食い友達程度である。
私が奴のことを以前とは違い好意を抱いていることについては否定はできないが…
そんな訳で最近は特に会ってもいないことを正直に伝えたのだが…
「確かに最近、隊長さんハーレに来ないわね」
「前は3日と空けずに来ていたのに」
私以外のハーレの面々が反応した。
たしかに以前はハーレへの用事のついでや巡回のついでなんかに立ち寄ってはランチやその日の夜の予定なんての聞かれていたがそれもなく、ご飯も時期が開いている。
「仕事や用事がないからでは?」
「…ヘルさんも知らないなら本当にあの女なんなのよ」
ギリギリと拳を握って苛立ちを隠さないウェルディさんを宥めていたら、ハーレの扉が開く。
こういう噂で表れない男じゃないわけで、入ってきたのは今まさにウェルディさんをヤキモキとさせている張本人であった。
毒を食らわば❷
入ってきたロックマンにまず違和感を感じた。
生来の気質だと思っていたきらきらしいとまで感じる存在感がなかった。
なんとなく疲れているのか、調子が悪いのかそんな雰囲気である。
入ってきたロックマンはウェルディさんを見つけると仕事の話をしながらハーレの食堂の方へ移動した。
その様子にまたもやハーレの面々が信じられないものを見たように言う。
「あの隊長さんがナナリーに声もかけずに…!」
「先輩、金の王子様と別れたんですか?」
「いや、そもそもお付き合いもしてない!」
そんな話をしてればまたもやハーレの扉が開く。今度は破魔士か依頼人かと受付に向かえば、綺麗な女の人が入ってきた。
貴族女性のような服装のその人はキョロキョロと辺りを見回して食堂の方で視線を止めた。
「アルウェス様!」
駆け出しそうな勢いでそれでいて上品な早歩きで食堂で話していたロックマンとウェルディさんが座るテーブルまで行く。
ウェルディさんの顔が引きつっているのを見て、もしかして、さっきウェルディさんが言っていた女性なのだろうか。