モテすぎ侯爵様は婚約者の気を引きたい 

昔は認めることも出来なかったが、アルウェス・ロックマンはナナリー・ヘルに長いこと片思いをしていた。
彼女に出会って自分が意識していなかった頃からも含めると人生の大凡が彼女を想っていたことになるほど。その割合およそ9割。
彼女も奇跡的に自分に好意を寄せてくれて、この想いは報われた。
しかし、自分の評価を何故か低く見積りがちな彼女は恋人で婚約者になろうとも僕にあまりその役割を期待していない。
女性が大抵喜ぶであろう花や宝飾品を送ってもお礼を言われることはあっても喜んだりしない。
なんで私に?みたいな顔をされてしまう。
そして、平民で逞しく育った彼女は例え僕が居なくてもそれはそれは平然と1人で生きていけるくらいに強い女性でもある。
だから…
「ロックマン家のご子息、アルウェス様が平民を妻に迎えると言っているそうだ」
「ああ。しかし、お相手は平民と言えど救国の魔女殿ですから、婚姻はそのお子のためでしょう」
「なにも夜の方はからきしのようですし、あのアルウェス様なら我らの娘も気に入ってくださるでしょう」
「余計なことを彼女の耳に入れたらタダじゃ置かないよ」
やっと落としたのだ。告白しあったのにその先を考えつかないような彼女をどうにかその気にさせた。

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モテすぎ侯爵様は婚約者の気を引きたい2 

こんな戯言を聞かれて、僕との結婚はやっぱりいいです。なんて言われた日にはこいつらを三日三晩火炙りにしてやりたいと思うだろう。
王宮とは情報の速さが権力に影響する場でもある。噂程度でも今後の進退や勢力図に影響あるものだ。ましてや、自分は末席ながら王族に連なるし、役職も要職も担っている。そして、僕の最愛もまたこの国にとっては大切な人であるし、それは世界にとっても同様だった。
「かの国より我が国の宮廷魔術師長殿に縁組のために態々姫君が訪問されるとか。」
「おや?婚姻の自由があるのにですか?」
「美しい姫でお互い満更でも無いご様子という話ですよ」
「しかし、宮廷魔術師長殿にはご婚約者が…」
「平民は婚約破棄は不名誉にはなり得ないのだそうだ」
「それはそれは。しかし、あの見目麗しい氷の魔女殿…しかもその力は始祖級という話ですからな養女として向かい入れて貴族の令息の結ばせるのが良いよいのでは?」
「あたりまえだ。どこの家もそれを狙っている」

「どこの家も?その家名を全て教えて貰っていいかな?」
どの噂も可能性も彼女の耳には入らないように。
やっぱり、私じゃない人と結婚するんだって言われた日にはこいつらを国境沿いに聳え立つ火山の噴射口から落としてしまいそうだ。

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