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67妄想 

(学生の頃から気になっていた女の子がいた。平民にしておくには惜しい、とびきり美しい容姿に優れた魔法。そして明晰な頭脳)
(その彼女は他にも目もくれず、ただ上だけを見つめていたけれど)

「とうとう完成した」
そうして男は月明かりに輝く黒い液体を一気に煽って飲み干した。

❖❖❖

月のない日だった。
コンコン、と窓を叩く音で窓際へと近づくと見知った甘やかな金髪と宝石のような赤い瞳が目に入る。
はて。
今日は急な予定で来れないと昼に手紙を受け取ったはずだった。
最近、何やら事件があったとかで忙しそうにしていたアルウェスはせっかく会える今日を楽しみにしていたが、それすらも難しくなったと、しかもそれを手紙で伝えることしか出来ないことをとても嘆いていたというのに。

「アルウェス?」

空離れの季節が近づいていることもあって外は寒いから窓を開けて向かい入れる。
「急にごめんね」とアルウェスはそろりと窓から入り込んできた。
そして、ふわりと香るお日様の香りに抱き締められたことを知る。

「ずっとこうしたかった」
「どうしたの、急に」

先程から様子がおかしい。
そして、たしかにアルウェスなのに、何かが違うと強く思った。

「誰?アルウェスじゃないわね」
美しいと思った赤はどこにもなかった。

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